楽観?悲観? 「世界を変える10大技術」から考えるAIの未来

How optimistic are you about AI's future? 楽観?悲観? 「世界を変える10大技術」から考えるAIの未来

年々進歩するテクノロジーは人間社会に役立つのか、害をなすのか、あるいはその両方なのか。本誌の「世界を変える10大技術」の2025年版を読んでいただけば、あなたが楽観主義者か、悲観主義者か分かるかもしれない。 by James O'Donnell2025.01.16

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

新しい年の始まりは、そしておそらく今年は特に、「テクノロジーの未来についてどれくらい楽観的に感じているか?」という、直感的なチェックをするのに良い時期だと思う。

先日発表された恒例の「ブレークスルー・テクノロジー10(世界を変える10大技術)」の2025年版は、その判断に役立つかもしれない。このリストの発表は今回で24回目となる。しかし、最も初期のリストと同様(ちなみに2001年のリストでは、脳コンピューター・インターフェイスとインターネット上の著作権で保護されたコンテンツの追跡方法を取り上げている)、今年紹介したテクノロジーは、社会に役立つか、害を及ぼすか、あるいはその両方になるかもしれない。

人工知能(AI)は、このリストで取り上げたブレークスルーの4つに該当するが、それらについての楽観的な見方は大きく異なると思われる。たとえば、生成AI検索はどうか。いまや、グーグルの「AIによる概要(AI Overviews)」で当たり前になりつつあるAI検索は、インターネットの理解しがたいほどの情報量を整理する助けとなり、私たちが尋ねる質問により良い答えを提供すると約束する。その過程で、コンテンツ制作者が報酬を得るモデルを覆しつつあり、誤りを犯しがちなAIを、真実と事実の裁定者という位置づけにしている。詳しくはこちらでお読みいただきたい。

AIのおかげでより速く学習できるようになったロボットの世界の大きな進歩もリストに入っている。このことは、私たちが人型ロボットを最もプライベートな空間に迎え入れるほど信頼できるのか、さらには、海外で働く人間によって遠隔操作された場合、私たちはどのように感じるのかについて、間もなく考えなければならなくなることを意味している。

このリストには、AI以外のテクノロジーも多数登場する。他の科学の進歩がいかに大きいかを思い起こすためにも、ぜひ読んでいただきたい。今年は、天文学用に作られた史上最大のデジタルカメラによるダークマターの研究や、牛のゲップからの排出ガス削減、さらには半年に一度の注射によるHIV予防などの進歩が見られるかもしれない。また、ロボットタクシーから幹細胞まで、長きにわたって耳にしてきたテクノロジーが、ついにその約束の一部を実現しつつあることについても書かれている。

今年は、テクノロジー楽観主義者とそれ以外の人たちとの間にある文化的な溝がさらに広がりそうだ。マーク・アンドリーセン(「テクノ・オプティミスト宣言(Techno-Optimist Manifesto)」の著者)のようなベンチャーキャピタリストからの支援や、(最近険悪ではあるが)イーロン・マスクとの関係のおかげで、ドナルド・トランプの次期政権はおそらく近年記憶される中で、最もシリコンバレーによって形作られる政権となるだろう。これらの人物は、テクノロジーに対するバイデン政権のアプローチを、のろまで「ウォーク(woke、意識高い系)」で、過度に慎重であると批判しており、その姿勢を覆すと誓っている。

そこで、大きな変化の年が始まるにあたり、皆さんにぜひ試していただきたい小さな実験がある。テクノロジーに対する自分の楽観主義のレベルと、その原動力について考えて欲しいのだ。「ブレークスルー・テクノロジー10」2025年版のリストを読んでいただきたい。そして、自分がどのように変化したかを考えて欲しい。多くの人がそうであるように、楽観主義者にも悲観主義者にもきれいに当てはまらないことに気づくのではないだろうか。もしかしたら、最高の進歩はそこから生まれるのかもしれない。


「7つの失敗」で振り返る2024年のAIシーン

ノーベル化学賞受賞の研究にも貢献したAIは、今年も引き続き注目を集めているが、失敗がなかったわけではない。違法なアドバイスをするチャットボットから、AIが生成した怪しい検索結果まで、2024年の主なAI失敗事例を振り返ってみよう

これらの失敗は、AIが生成するものを誰がどのようにモデレートするのか、チャットボットが生成する回答を信頼しすぎていないか、インターネットをますます占拠しつつある山のような「AIスロップ」をどうするのかなど、このテクノロジーについて答えのない疑問が山ほどあることを示している。とりわけ、私たちが接するあらゆる製品にやみくもにAIを押し込むことに、多くの落とし穴がある可能性を示している。

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