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Cattle burping remedies: 10 Breakthrough Technologies 2025 牛のゲップ抑制サプリ

牛のゲップは農業における最大の温暖化ガス排出源の1つとなっている。牛の腸内で作用してゲップによるメタンガス放出を抑制するサプリメントの市販が、ついに米国で承認された。

by James Temple 2025.01.15
María Jesús Contreras
キープレイヤー
ブルー・オーシャン・バーンズ、DSMファーメニッヒ、ルミン8、シンブロシア
実現時期
実現済み

気候変動にとって最も厄介な問題の1つである牛のゲップについて、企業はようやく真の前進を遂げつつある。

世界中にいる牛たちは、羊やヤギと同様に、消化の副産物としてメタンを吐き出している。この強力な温室効果ガスは単独で最大の家畜排出源となっており、分析にもよるが、すべて合わせると世界の気候汚染全体の11%から20%を占めている。

単純にハンバーガー、ステーキ、バター、牛乳はおいしいため、需要を減らすことで意味のある量の排出を削減するのは難しい。しかも、世界人口の増加と富裕化によって、これらの食品の消費は増える一方である。

そこで、牛のゲップを抑制するサプリメントの登場だ。オランダを拠点に香料や医薬品などを製造する複合企業であるDSMファーメニッヒ(DSM-Firmenich)は、飼料サプリメント「ボベアー(Bovaer)」を開発した。同社によれば、乳牛ではメタン排出量を30%、肉牛ではさらに多くの量を削減できるという。動物の腸内では通常、消化中に発生する水素と二酸化炭素が酵素の働きによってメタンに変換され、吐き出される。ボベアーは、この酵素の働きを阻害することで機能する。

2024年5月、米国食品医薬局(FDA)は、ボベアーの米国での使用を承認した。DSMによると、この飼料添加物は現在、オーストラリア、ブラジル、欧州連合(EU)加盟国を含む55カ国以上で利用可能だという。

一方、ブルー・オーシャン・バーンズ(Blue Ocean Barns)ルミン8(Rumin8)シンブロシア(Symbrosia)といったスタートアップ企業は、メタンガスのレベルをさらに下げる可能性のある、紅藻の一種に由来する製品の開発やテスト、承認申請を進めている。さらに、ワクチンの開発や家畜の腸内の微生物を変化させるなど、より長続きする方法でこの問題に取り組もうとしている組織もある。

このような製品にお金を払う畜産農家がどれくらいいるのかは、今のところ不明である。しかしボベアーの場合、このサプリメントを使用する酪農家は温室効果ガス排出権を獲得することができる。米国でこの飼料添加物を販売しているエランコ(Elanco)によれば、一部の企業はこの排出権を、自社の気候フットプリントを削減する手段として自主炭素市場で購入するだろうという。一方、ルミン8によれば、同社のサプリメントを摂取した牛は、肉やミルクの生産量が増える可能性があるという。

このサプリメントですべての問題が解決するわけではないのは確かだ。畜産業界は、二酸化炭素を吸収する森林の破壊を止めるなど、気候温暖化ガスの排出量を削減する他の主要な措置を講じる必要がある。そして食品企業は、肉や牛乳の需要を実際に少しだけでも減らすために、植物由来のハンバーガーや代用乳製品のような、より優れた、より安い、よりクリーンな代替製品を開発する必要があるだろう。

しかし、メタン削減サプリメントは、非常に大きな問題の大きな部分を解決する方法として、ますます有望であるように見えつつある。

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