グリーン鉄鋼:世界を変える10大技術

Green steel: 10 Breakthrough Technologies 2025 グリーン鉄鋼:世界を変える10大技術

鉄鋼を製造する際には、多くの温室効果ガスが排出される。スウェーデンでは現在、二酸化炭素排出量をほぼゼロにする産業規模の鉄鋼製造プラントの建設が進められている。 by Douglas Main2025.01.15

再生可能エネルギーから作られた水素を鉄鋼生産に利用する方法は、世界の二酸化炭素排出量の約8%を占める鉄鋼産業をクリーンにするのに役立つ可能性がある。

ほとんどの鉄鋼は、いまだに石炭を原料とする高炉で製造されており、鉄鋼1トンあたり約2トン以上の二酸化炭素が排出されている。天然ガスを使って鉄鉱石を鉄(鉄鋼の主要成分)に変える直接還元法と呼ばれる新しい大量生産技術では、排出量を約40%削減できる。しかし、それでも炭素汚染は多い。

そこで複数の企業が、再生可能エネルギーから作った水素を鉄鉱石と反応させて鉄を製造する方法を開発している。製鉄プロセスのなかで、最もエネルギーを消費し、最も炭素汚染が発生する過程である。このようなプロセスによって、理論的には排出量をゼロに近づけることができる。

スウェーデンのスタートアップ企業ステグラ(Stegra)は、同国北部のボーデンにそのようなプラントを建設するため、70億ドル近くを調達した(昨年9月に同社はH2グリーンスチール(H2 Green Steel)から社名を変更した)。このプラントでは、風力発電と水力発電を組み合わせて供給されるクリーンな電力を使い、水を電気分解して水素を作る。2026年の生産開始に向けて順調に進んでおり、この種のものとしては初の産業規模での操業となりそうだ。

鉄鋼メーカーのSSAB、鉱山会社のLKAB、エネルギー会社のバッテンフォール(Vattenfall)が開発した「ハイブリット(Hybrit)」という技術では、同様のプロセスでグリーン鉄鋼を製造する。LKABは現在、自社の鉄鉱石鉱山に隣接するスウェーデンのイェリバーレにプラントを建設中だ。しかし、環境許認可の取得が難航しており、計画は遅れている。

グリーン鉄鋼を製造するもうひとつの方法は、鉄鉱石と電解液の混合物に電流を流して酸化鉄の結合を切断し、精製された金属を分離するというやり方だ。クリーンな電力源があれば、このプロセスは二酸化炭素排出量が極めて少なく済む。ボストン・メタル(Boston Metal)は、このプロセスの商業化を目指しており、2026年中の許認可取得を目指している。

ステグラのプラントが完全に稼動すれば、年間450万トンの鋼鉄が生産されることになるが、これは年間数十億トンという世界の鉄鋼生産量のごく一部にすぎない。とはいえ、大量の二酸化炭素を排出することなく鉄鋼の製造ができることが示され、環境に優しい製品を求める顧客がプレミアムを支払うことになれば、業界のクリーン化に向けた有望なスタートとなるだろう。