NASA巨大ロケット、
スペースX台頭で存続危機に
命運握るトランプ&マスク
スペースXなど民間企業のロケットの急速な進歩を受けて、NASAのスペース・ローンチ・システム(SLS)がトランプ次期大統領の政権下で中止になる可能性が出始めた。だが、SLSは依然として、NASAの月帰還計画で重要な役割を担っている。 by Jonathan O'Callaghan2024.12.02
- この記事の3つのポイント
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- NASAの巨大月ロケットSLSの必要性に疑問の声が上がっている
- スペースXのスターシップなどライバルロケットが急成長
- SLS中止の是非は政治判断だが影響は広範に及ぶ可能性
米国航空宇宙局(NASA)の巨大な月ロケット、「スペース・ローンチ・システム(Space Launch System:SLS)」が危機に瀕しているかもしれない。 スペースX(SpaceX)の「スターシップ(Starship)」など、ライバルのロケットが急成長を遂げる中、そもそも米国の国家宇宙機関であるNASAが独自の巨大ロケットを持つ必要性を疑問視する声も出ているのだ。このことは、スペースXのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が重要な役割を担うことになっている次期トランプ政権の焦点になるかもしれない。
「政府を説得してSLSを中止させることがイーロン・マスクの利益になることは、間違いありません」。米国の宇宙コンサルティング会社アストラリティカル(Astralytical)の創業者であるローラ・フォルチクは言う。「しかし、SLSを中止するか否かは彼に委ねられているわけではありません」。
SLSは10年以上前から開発が進められてきた。このロケットは、高さ98メートルという巨大なものであり、1960年代から70年代のアポロ計画で宇宙飛行士を月に運んだサターン(Saturn)V型ロケットよりも、約15%強力だ。また高価でもあり、1回の打ち上げでおおよそ41億ドルかかる。
SLSは、ある明確な目的を持って設計された。宇宙飛行士を月面に帰還させることだ。NASAの有人宇宙船「オリオン(Orion)」を打ち上げるために作られたこのロケットは、前トランプ政権によって2019年に始まった、月に戻るためのNASAのアルテミス(Artemis)計画の重要な一部である。「SLSには果たすべき重要な役割があります」と、かつてNASAの副長官を務めたダニエル・ダンバッハーは言う。ダンバッハーは、2010年にSLSを開発対象に選んだチームの中の1人である。「SLSが選ばれた論理は、今でも有効です」。
このロケットは、2022年の「アルテミス I」ミッションですでに一度打ち上げられている。このテスト飛行では、無人のオリオン宇宙船が月周辺に送られた。2025年9月に予定されている「アルテミス II」も同じ飛行となるが、今度は4人の乗組員を乗せて打ち上げられる。その後、2026年9月には、最初の月面着陸となる「アルテミス III」の飛行が予定されている。
SLSは、他の目的地へ向かうミッションの打ち上げに使われる可能性もある。NASAは一時期、木星の月エウロパに向かう「エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)」宇宙船を、SLSを使って打ち上げるつもりだった。しかし、コストと遅延を理由に、今年10月に実施された同ミッションの打ち上げには、代わりにスペースXの「ファルコンヘビー(Falcon Heavy)」ロケットが使用された。ファルコンヘビーはまた、 …
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