KADOKAWA Technology Review
×
マイクラ内に「AI文明」、
1000体のエージェントが
仕事、宗教、税制まで作った
Altera
人工知能(AI) Insider Online限定
These AI Minecraft characters did weirdly human stuff all on their own

マイクラ内に「AI文明」、
1000体のエージェントが
仕事、宗教、税制まで作った

最大1000体のAIエージェントが、ゲーム「マインクラフト」内で驚くべき社会を形成した。エージェントは自発的に役割を分担し、経済活動を始め、文化や宗教を作り上げたという。 by Niall Firth2024.12.03

この記事の3つのポイント
  1. マインクラフト上で1000体のAIエージェントが自律的にやり取りした
  2. エージェントは専門的な役割を担い人間らしい行動を示した
  3. 開発者は将来、AIと人間が日常的に交流する世界の実現を目指している
summarized by Claude 3

放任された人工知能(AI)キャラクターの一群は、ただ生き延びるだけでなく、繁栄した。彼らは、ゲームの中で仕事を開発し、ミームを共有し、税制改革に投票し、さらには宗教を広めた。

この実験は、オープンワールド・ゲーム・プラットフォームの「マインクラフト」上で実施されたもの。最大で一度に1000体のソフトウェア・エージェントが大規模言語モデル(LLM)を使って相互にやり取りした。テキストプロンプトで促すだけで、エージェントたちは、人間のクリエイターからの追加のインプットなしに、驚くほど幅広い性格的特徴や嗜好、専門的な役割を身につけた。

AIスタートアップ企業のアルテラ(Altera)によるこの研究は、シミュレーションされたエージェントを使用し、人間の集団が新しい経済政策やその他の介入に対してどのように反応するかをモデル化する試みの一部である。

しかし、同社の創業者兼CEOのロバート・ヤンにとって、このデモンストレーションはまだ始まりに過ぎない。アルテラを立ち上げるために、マサチューセッツ工科大学(MIT)の計算論的神経科学の助教授の職を辞したヤンCEOは、今回の取り組みをデジタル空間で人間と共存し、共に働くことができる大規模な「AI文明」の実現に向けた初期段階と考えている。「AIの真の力が発揮されるのは、大規模なコラボレーションを可能にする、真に自律的なエージェントが実現したときでしょう」とヤンCEOは言う。

ヤンCEOは、スタンフォード大学の研究者であるジュン・ソン・パクの研究から大きなインスピレーションを受けたという。パクは2023年に、25体の自律型AIエージェントの集団を基本的なデジタル世界に放ち、それらを相互にやり取りさせたところ、驚くほど人間らしい行動が生じることを発見した。

「彼の論文が発表されると、私たちは翌週からこの研究に取り組み始めました。その半年後、私はMITを辞めました」(ヤンCEO)。

ヤンCEOはこのアイデアを極限まで追求したかった。「エージェントが集団で自律的にできることの限界を押し広げたいと考えました」。

アルテラはすぐに、A16Zや、元グーグルCEOのエリック・シュミットが設立した新興テクノロジー系ベンチャーキャピタルから1100万ドル以上の資金を調達した。今年初め、アルテラは最初のデモンストレーションを公開した。これは、AIが制御するキャラクターがマインクラフト内で人間と一緒にプレイするというものだった。

アルテラの新たな実験的取り組みである「プロジェクト・シド(Project Sid)」では、複数のモジュールで構成された「脳」を備えたシミュレーションAIエージェントを使用している。一部のモジュールはLLMを搭載しており、他のエージェントへの反応、会話、次の動きの計画など、特定のタスクに特化した設計となっている。

研究チームは小規模な試験から始めた。マインクラフト内で約50体のエージェントの集団をテストし、そのや …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Why the next energy race is for underground hydrogen 水素は「掘る」時代に? 地下水素は地球を救うか
  2. IU35 Japan Summit 2024: Nobuyuki Yoshioka 「量子コンピューターの用途解明、新たな応用へ」吉岡信行
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る