グーグルに帝国解体の危機、米司法省がクローム売却も要求

Google's antitrust gut punch and the Trump wild card グーグルに帝国解体の危機、米司法省がクローム売却も要求

米司法省は11月20日、検索エンジン市場での独占行為を認定されたグーグルに対し、厳格な是正措置案を提示した。アップルなど他社への支払い停止に加え、クロームやアンドロイドの売却も求める厳しい内容だ。この内容を詳しく解説する。 by Mat Honan2024.11.30

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

米国司法省(DOJ)は11月20日、グーグルに対する反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)訴訟で、グーグルの市場独占を是正する措置を提案した。この是正措置は、違法と認定された独占的行為を解消し、市場での公正な競争を取り戻すために、裁判所が企業に命じる具体的な行動を指す。司法省がグーグルに甘い態度を取るとは誰も思っていなかったが、提案された是正措置は抜本的なものであり、もし実施されれば、グーグルの事業に壊滅的な影響を与える可能性がある。

背景から説明しておこう。この訴訟は2020年に米国司法省がグーグルを相手取って提起したものである。司法省は、グーグルが検索エンジン市場での独占的な地位を利用して、不公正な方法で競争を妨げていると主張。今年8月、コロンビア特別区連邦地裁のアミット・メータ判事は司法省に有利な判決を下し、グーグルが違法な独占企業として事業を運営していると認定した。この判決を受けて司法省は今回、グーグルが取るべき是正措置について意見を述べたわけだ。今後、グーグルも独自の是正措置案を裁判所に提案する予定である。最終的には、メータ判事がこれらの是正措置をどのように実施するか(あるいは実施しないか)を決定することになる。

では、司法省は何を提案しているのか。以下に詳しく説明する。

司法省が求めている是正措置は、まだこれだけではない。しかし、ここまででも十分に理解できるだろう。非常に強烈な規制案である。

今後の見通し

現在の状況は、刑事裁判における「被告が有罪判決を受け、検察が量刑を提案する段階」に似ていると考えることができる。この場合、最終的な決定権を持つのは裁判官である。裁判官は、グーグルが提案するようなより軽いペナルティを採用することもできるし、司法省の提案のすべてまたは一部を取り入れることも可能である(あるいはまったく異なる独自の判断を下すこともあり得る)。要するに、今回の発表により、司法省が望んでいることは明らかになった。しかし、最終的に何が実現するかはまだ分からない。そして当然ながら、この件は控訴審に進む可能性が高い。

トランプ政権はどう動く?

この問題における少し予測困難な要素として、メータ判事が最終判断を下す頃には(2025年4月に2週間の公判が設定されており、最終判決は同年8月と予測されている)、新しい政権が誕生しているという点が挙げられる。理論上は、トランプ政権の誕生で、訴訟を完全に取り下げたり、より軽い是正措置を求めたりする可能性がある。

今のところ、トランプ政権がどう動くかは明らかではない。しかし、グーグルが「トランプ陣営」に多くの友人を持っていないことを考える価値はある。副大統領に選出されたJ・D・ヴァンスは「グーグルを解体する時が来た」と明言している。また、トランプ次期大統領は以前からグーグルに対して不満を公にしており、この訴訟自体も4年前に最初のトランプ政権下で始まった点は注目に値する。

とはいえ、先月のインタビューでブルームバーグのジョン・ミクルスウェイト編集主幹が、グーグルの親会社アルファベットを分割すべきかどうかを尋ねた際、トランプ次期大統領はやや曖昧な回答をした。彼は、グーグルの分割について「非常に危険なこと」と述べ、中国がグーグルを恐れている点を指摘した。そして「こうした脅威に立ち向かう必要がある時もある。私はグーグルのファンではないし、彼らは私をひどく扱っているが、だからといって会社を破壊する必要があるだろうか?」と語った。また、「会社を分割せずにもっと公平にする方法がある」とも述べている。

トランプ次期大統領の見方は?

トランプ次期大統領は、グーグルを中国に対抗する防波堤として見る可能性がある。グーグル以上にトランプ次期大統領が嫌うものがあるとすれば、それは中国かもしれない。しかし、最終的にはトランプ次期大統領が直近で誰と話したか次第、という状況になるかもしれない。ヴァージ(The Verge)のニライ・パテル編集長が指摘したように、トランプ次期大統領のテック分野での盟友の中には、すでに「反グーグル陣営」に属する人物が多い。「グーグルにとっての問題は、アンドリーセン、バンス、マスクといった人物がこの考えを非常に気に入っている点だ」と、ブルースカイに投稿している。

さらに、ピーター・ティールもそのリストに含めるべき重要人物である。ティールは、グーグルに対して非常に批判的であり、特に中国との関係を問題視している。彼はニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、グーグルを「ほとんど裏切り行為に等しい」とまで呼んだことがある。このような背景もある。

個人的な見解

私は弁護士ではないし、これは投資アドバイスではない。その点をまず明確にしておく。しかし、私は長年、ほぼキャリア全体にわたってグーグルを取材してきた。

グーグルがあまりにも大きく、あまりにも強大になりすぎているかと聞かれれば、間違いなくそうだと思う。一社がこれほど市場を支配するべきではない。グーグルだけではなく、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトも同様だ。そして、それらが揃ってこれほど大きいこと自体が、特に問題だ。巨大テック企業を見ていると、まるで大国が自分たちの影響圏を分割している植民地時代の政治風刺漫画のようだ。ただし、今回は私たち全員が「中国」のような扱いを受けているわけだ。

とはいえ、少し反論されそうなことを言うが、クロームとアンドロイドに対するグーグルの支配は、消費者にとって少なからず利益をもたらしている、少なくとも良好な体験を提供する助けになっていると考えている。データ収集の実態は恐ろしいし、潜在的に危険だ。それに、製品の「エコシステム」は多くの場合、利用者がそのシステムから抜け出しにくくするための「沼」であることが多い。

だが、グーグルがクローム、Gメール、検索、マップ、ジェミニ(Gemini)、アンドロイド、フォトなどの製品を相互運用可能にしている点は、純粋にユーザー視点で見ると「まあまあ良い」部分だ。これにより、複数の製品間でデータ、ログイン履歴、さらには個人の好みまで共有することができ、少なくとも生活を少しだけ便利にしてくれる。些細に思えるかもしれないが、例えば、医師の予約確認メールを受け取ると、それをグーグルが自動でカレンダーに追加し、出発時刻を通知し、新しい診療所までのナビゲーションを提供してくれるのは、実際にはかなり役に立つ。

是正措置は、他社と結んでいる契約、特にグーグルの検索エンジンをデフォルトにするための契約を標的とすべきだと思う。数十年ぶりに、本格的な検索エンジンの代替案が登場し始めており、それを「秘密の多額契約」によって妨げるべきではない。また、良い判決とは、検索結果においてグーグルが自社製品やサービスを優先させる能力を制限するものだと考えている。例えば、「近くの美味しいタイ料理店」と検索すると、グーグルは自社のデータベースに基づく店舗リストとユーザーレビューを、グーグルマップ上にプロットして表示するが、それが実際にはより良いレビューを持つイェルプ(Yelp)のリンクよりも上に表示されている。これには問題がある。

もしかしたらあなたは違う意見を持っているかもしれない。それでも、私に反論し、私が間違っていると主張する十分な時間はまだある。この訴訟が非常に長期化することだけは確実だからだ。