AI検索「ただ乗り」問題、
収益分配の仕組み構築急げ
Web上の情報を要約するAI検索サービスは、情報源のコンテンツをそのまま置き換えてしまうことでデジタルエコノミーを破綻させかねない。AI業界は早急に、あらゆるコンテンツ制作者が報われる枠組みを作る必要がある。 by Benjamin Brooks2024.11.12
- この記事の3つのポイント
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- AI検索の台頭により既存のデジタル経済が混乱する恐れがある
- 著作権法ではAI検索の課題に十分に対処できない可能性が高い
- AI業界は公平なコンテンツ市場の構築にこの機会を活用すべきだ
ニューズ・コーポレーション(News Corp)は10月下旬、人気の人工知能(AI)検索エンジンであるパープレキシティAI(Perplexity AI)に対して訴訟を起こした。一見すると、さして取り立てるほどのこともない訴訟に思えるかもしれない。結局のところ、AI開発者によるデータ使用に対するクレジット、同意、または補償を求める20件以上の訴訟が1件増えただけのことである。しかし、これは他の訴訟と一線を画すものである。そして、最も影響の大きいものになるかもしれない。
この訴訟で問われているのは、AI検索の未来である。つまり、Web上の情報を要約するチャットボットの未来が問題となっている。チャットボットの人気が高まっていることを考えると、こうしたAI「回答エンジン」は、インターネットへのデフォルトの入口として従来の検索エンジンに取って代わる可能性がある。通常のAIチャットボットは、訓練によって学習した情報を再現できるが、その情報の信頼性は低いことが多い。一方、パープレキシティ、グーグルのジェミニ(Gemini)、またはオープンAI(OpenAI)が現在公開しているサーチGPT(SearchGPT)のようなAI検索ツールは、サードパーティのWebサイトから情報を取得し、再パッケージ化することを目的としている。これらのツールは、研究論文からウィキペディアの記事、ユーチューブ(YouTube)のトランスクリプト(文字起こし)に至るまで、いくつかの情報源へのリンクとともに、簡単な要約をユーザーに返す。AIシステムは読み書きをするが、情報は外部から取得されたものだ。
AI検索はうまく機能した場合、ユーザーの意図をより的確に推測し、質の高いコンテンツを増幅させ、多様な情報源からの情報を合成することができる。しかし、AI検索がWebへの主要な入口となれば、すでに不安定なデジタル・エコノミーを混乱させる恐れがある。現在、オンライン・コンテンツの制作は、広告、サブスクリプション、寄付、売上、ブランド露出といった、バーチャルな訪問客数に結びついた脆弱なインセンティブに依存している。すべてを知っているチャットボットの背後にWebを隠すことで、クリエイターが生き残るために必要なユーザーの訪問と注目を奪ってしまう可能性がある。
AI検索がこのエコシステムを破壊するならば、既存の法制度は役に立たない可能性が高い。政府はすでに、コンテンツは既存の法制度では対応ができないと考えており、他の方法でWeb上の価値の流れを規制することを学んでいる。政府が、Web上のアイデアの自由な流れを妨げて一部の人のみが恩恵を受ける効果のない介入に頼る前に、AI業界はこのわずかな機会を利用して、よりスマートなコンテンツ市場を構築すべきである。
著作権はAI検索の混乱に対する答えではない
ニューズ・コーポレーションは、AI検索のために自社のコンテンツを使用して情報を抽出することは著作権侵害にあたると主張し、「読者獲得争いを繰り広げると同時に、パブリッシャーにタダ乗りしている」としてパープレキシティAIを批判している。この意見は、10月中旬にパープレキシティAIに自社コンテンツの使用停止を求める停止通告書を送ったニューヨーク・タイムズ紙も共有していると思われる。
ある意味、AI検索に対するこの訴訟の主張は、AI訓練に関わる他の訴訟よりも説得力がある。AIの訓練では、ありふれた反復的なコンテンツが最大の効果を発揮する。AIモデルは、膨大なデータセットの中で繰り返されるパターンを観察することで、一般化できるふるまいを学習する。したがって、単一のコンテンツが与える影響は限られている。一方、AI検索では、コンテンツが最も影響力を持つのは、それが斬新なものであったり、独特なものであったり、制作者が他にはない権威を持っている場合である。AI検索は意図的に、その基礎となるデータに見られる具体的な特徴を再現し、オリジナルの作成者の信用を想起させ、オリジナルのコンテンツの代わりとなるこ …
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