科学者でなくてもDNAにデータをエンコード(符号化)できることが判明した。研究者たちは何十年もの間、DNAベースのデータ・ストレージの研究に取り組んできたが、人間の細胞の化学的プロセスをヒントに新たに開発されたテンプレート・ベースの手法は、科学者でなくても実践できるほど簡単だ。この手法は、従来とは異なる、極めて安定した情報保存方法への道を開く可能性がある。
DNAにデータを保存するというアイデアは、物理学者リチャード・ファインマンによって1950年代に初めて提唱された。遺伝物質は並外れたストレージ密度と耐久性を持っている。1グラムのDNAは、1兆ギガバイトのデータを保存して、何千年もその情報を保持することができる。その数十年後、ハーバード大学のジョージ・チャーチ率いるチームがファインマンのアイデアを実践し、5万3400語の書籍の内容をDNAにエンコードした。
この初期のアプローチは、情報をエンコードするために、ヌクレオチドの構成要素である4つの塩基A、T、C、Gを使い、糸でつながったビーズのように遺伝子配列を一つひとつつなぎ合わせてDNAを合成する方法を採っていた。このプロセスは高価で時間がかかり、エラーが発生しやすく、ヌクレオチド1つをDNA鎖に付加するたびに1ビット(8分の1バイト)の情報しか持たせることができなかった。さらに重要なことに、このプロセスを実行するには高度な専門知識が必要だった。
10月23日付けでネイチャー(Nature)誌に発表された新しい手法は、より効率的だ。複数の鎖を並行してエンコードすることで一度に350ビットの情報を保存できる。北京大学のロン・チアン博士らの研究チームは、DNA鎖を1本1本つないでいくのではなく、前もって作られた約20ヌクレオチド長のDNAブロックで鎖を組み立て、その過程で一部を変更し、他を変更しないことで情報をエンコ …