左側通行から右側通行へ、英有力スタートアップが挑む完全自動運転の意外な難題

How Wayve’s driverless cars will meet one of their biggest challenges yet 左側通行から右側通行へ、
英有力スタートアップが挑む
完全自動運転の意外な難題

英スタートアップのウェイブ(Wayve)は、米国で自動運転車のテストを開始する。エンドツーエンド学習を採用する同社の自動運転技術は適応性の高さを売りにしているが、左側通行の英国から右側通行の米国への進出で、その真価が問われることになる。 by Will Douglas Heaven2024.10.29

英国の無人自動運転車スタートアップ企業であるウェイブ(Wayve)は、西へ向かっている。ウェイブの自動車はロンドンの路上で運転方法を学習した。だが、同社はサンフランシスコ周辺でもその技術テストを開始すると発表した。そのことは新たな課題を提起している。左側通行から右側通行に切り替える必要があるのだ。

英国訪問者あるいは英国出身者なら理解できるだろう。この切り替えは想像以上に難しい。道路の見え方、車の曲がり方、すべてが異なる、とウェイブのソフトウェア担当副社長シルヴィウス・ルスは言う。米国で長年過ごしたルス副社長自身、昨年になってようやく左側通行を習得した。「長年運転してきた人間にとっても、それは些細な違いではありません」。

米国進出は、多くのライバル企業よりもはるかに汎用的な技術を提供すると主張しているウェイブのテクノロジーが試されることになる。同社は、独自のアプローチにより、今年5月に英国の記録を塗り替えた10億ドルの資金調達ラウンドを含む巨額の投資や、アズダ(Asd)やオカド(Ocado)などのオンライン食品小売業者やウーバー(Uber)との提携をすでに確保している。だが、今後はクルーズ(Ocado)、ウェイモ(Waymo)、テスラ(Tesla)といった、成長を続ける自動運転車業界の有力企業と真っ向から勝負することになる。

2022年、私が初めてロンドン北部にあるウェイブのオフィスを訪れたとき、建物内の自動車整備場には2、3台の車が止まっていた。だが、この秋の晴れた日に再び訪れると、整備場も前庭も車でいっぱいだった。10億ドルを調達したことで、多くのハードウェアを購入できるようになったのだ。

私は同乗試乗に参加した。ロンドンでは、自動運転車は依然として人々を振り向かせるほど特異なものだ。だが、ウェイブのジャガー・Iペイス車の助手席に座っていて印象的だったのは、コンピューター・プログラムが運転する車に乗っていることがいかに奇妙に感じられるかということではなく、いかに普通で、快適で、安全かということだった。この車は私よりも運転がうまかった。

英国の規制当局はまだ、完全無人運転のロンドンでの路上走行を認めていない。テストドライバーはハンドルから1センチメートルだけ両手を浮かせた状態で私の隣に座っており、ハンドルは手の下で左右に回転していた。試乗中、ルス副社長が後部座席から解説をしてくれた。

ルス副社長によると、日中の交通量は少ないが、その方が難易度が高くなるという。「混雑時は、前の車についていくことになります」。私たちは、道路工事やサイクリスト、道路の真ん中で止まっている他の車などを避けながら進んでいった。雨が降り始めた。あるとき、私は自分たちが道路の間違った側を走行しているのではないかと思った。しかし、その道路は一方通行だった。この車は、私が見落とした標識を認識していたのだ。私たちはあらゆる交差点を、意図的に自信を示すように進んでいった。

あるとき、(人間がハンドルを握っている)青い車が私たちのすぐ前の車の流れに鼻先を突っ込んできた。都会のドライバーなら、これには2通りの展開があることを知っている。進むのを控えれば、他の車が割り込む合図になる。前に進めば、その車に順番を待つよう指示することになる。ウェイブの車は前に出た。

1秒ほどのやりとりだった。しかしそれは、試乗中、最も印象的な瞬間だった。ウェイブによれば、同社のモデルはこのような防衛運転の習慣を数多く身につけているという。「こちら側に優先通行権があり、最も安全なアプローチはそれを行使することでした」とルス副社長は話す。「プログラムされているわけではなく、そうするように学習したのです」。

運転方法の学習

ウェイブの車がすることはすべて、プログラムされたものではなく、学習されたも …

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