KADOKAWA Technology Review
×
口頭指示で化学実験、24時間稼働するロボット研究助手
COURTESY OF THE RESEARCHERS
コンピューティング 無料会員限定
This lab robot mixes chemicals

口頭指示で化学実験、24時間稼働するロボット研究助手

トロント大学のチームは、コンピュータービジョンと大規模言語モデルを組み合わせて、話し言葉での指示に従って複数ステップの化学実験を自動実行し、結果のレポートも作成できるデスクトップ型ロボットシステムを開発した。 by Kristel Tjandra2024.10.22

この記事の3つのポイント
  1. オルガナは化学実験を自動化するデスクトップ型ロボットシステム
  2. オルガナは科学者の口頭指示を実験手順に変換できる
  3. 実験データに関するフィードバックも提供する
summarized by Claude 3

研究室の科学者たちは、ピペットで液体サンプルを吸ったり、同じ分析を何度も繰り返したりと、骨の折れる反復的作業に多くの時間を費やしている。だが、もしロボットに指示するだけで、実験やデータ分析、レポート生成をしてくれるとしたらどうだろうか。

「オルガナ(Organa)」は、トロント大学の研究チームが考案した、化学実験を自動実行するデスクトップ型ロボット・システムだ。アーカイブ(arXiv)に投稿された査読前論文(プレプリント)によると、オルガナはコンピュータービジョンと、科学者の口頭での指示を実験の手順に変換する大規模言語モデル(LLM)とを組み合わせることで、化学実験におけるいくつかのタスクを自動化できるという。

化学実験で科学者に協力してくれるロボットがいることを想像してみてほしい、と話すのは、プロジェクトのリーダーの1人であるトロント大学の化学者兼コンピューター科学者、材料科学者のアラン・アスプル・グジク教授だ。アスプル・グジク教授の目標は、従来の研究室における自動化を「最終的には 人工知能(AI)科学者を生み出す」レベルにまで高め、実験のトラブルシューティングから結果に関するフィードバックの提供までこなせるようにする、というものだ。

アスプル・グジク教授らのチームは、オルガナが柔軟性を持つように設計した。そのため、機能が固定化された一般的な自動化システムのように単一のタスクまたは実験の一部だけを実行するのではなく、然るべきタイミングで複数ステップの実験ができるようになっている。オルガナには視覚化ツールが実装されており、実験の進捗状況を監視したり、実験の進行状況に関するフィードバックを …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. OpenAI says ChatGPT treats us all the same (most of the time) 相手の名前で回答が変わる?チャットGPTに潜むバイアス明らかに
  2.  A data bottleneck is holding AI science  back, says new Nobel winner ノーベル受賞者・ベイカー教授が指摘する「AI科学」の課題
  3. These are the best ways to measure your body fat ウエスト計測よりも正確、シンプルな体脂肪測定法「SAD」とは?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者は11月発表予定です。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る