IBMリサーチのダリオ・ジル副所長(科学・ソリューション担当)は、月曜日にサンフランシスコで開催されたEmTech Digitalカンファレンスに登壇し、人工知能の支援により、将来有望な新材料を特定するペースが加速していると述べた。
ジル副所長によると、ノートPCで機械学習ソフトウェアを動作させれば、複数の科学論文から極めて重要な情報をわずか数秒で抽出し、数十年ではなく数週間で、幅広い研究にまたがる膨大なナレッジ・グラフ(情報の関係を示す図)を作成できるという。つまり、アルゴリズムやシミュレーションを利用することで、従来個人が読めた量よりもはるかに多くの特許や論文などの報告書の束から、研究者がヒントを得られるのだ。
今の所、ジル副所長は特定のブレークスルーに言及していないが、IBMは新たなポリマー(重合体)を発見する研究で、IBMの人工知能システム「ワトソン」を既に応用しているという。ただ、AIやコンピューティングの性能が進歩しているにも関わらず、世界で最も強力なスーパー・コンピューターでさえ、分子の電子構造の予測などでは、まだ答えを出せないことが多いとジル副所長は指摘した。しかしIBMは現在量子コンピューティングの台頭に大きな可能性を見出している。粒子コンピューティングは量子物理学の一風変わった特性を利用しており、計算速度を劇的に向上させ、自然状況をより詳細に模倣できる。
IBMは昨年、量子コンピューター用の新たな半導体を発表した。また、3月初めには、他社がサービスとして使えるクラウド型量子コンピューティング・システムの開発計画を発表した。「量子コンピューターの性能を考えると、今年から来年までにIBMは極めて大きな進展を経験することになると見込んでいます」とジル副所長はいう。