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需要なくして成功なし、
米エネ省のCO2回収事業が
直面する厳しい現実
Stephanie Arnett/MIT Technology Review | Envato
気候変動/エネルギー Insider Online限定
Experts warn the US must do more to boost demand for carbon removal 

需要なくして成功なし、
米エネ省のCO2回収事業が
直面する厳しい現実

米エネルギー省は35億ドルを投じてCO2直接空気回収プロジェクトを推進している。しかし、高額な設備投資と運用コストに見合う炭素クレジットの市場需要が不足しており、深刻な課題となっている。政府と業界は需要創出に向けた新たな戦略を模索している。 by James Temple2024.10.15

この記事の3つのポイント
  1. 米国は二酸化炭素除去産業育成のため35億ドルを投じ4つの地域ハブ建設を推進中
  2. CO2除去は公共の利益だが企業の需要は限定的で政府支援の強化が必要との指摘
  3. 政府による需要支援の強化がなければ、資金を得た施設の一部は存続できない可能性も
summarized by Claude 3

2022年、米国は二酸化炭素除去産業の可能性に大きく賭け、新興分野であるこの産業を育成するために、35億ドルを投じて4つの主要な地域ハブを建設することを決定した。だが、業界観測筋は、連邦政府からの多額の助成金やその他の補助金にもかかわらず、市場の需要が新産業を支えるほどのスピードで拡大していないことを危惧している。

現在、米エネルギー省に対し、直接空気回収(DAC)プラントの建設に割り当てている資金の一部を、温室効果ガス除去クレジットの購入に回すよう求める意見が一部出ている。問題は、これらのプラントが最終的に生み出し、ほとんどの場合すぐに地中に埋められる生成物、つまり二酸化炭素に対する自然な需要が不足していることだ。企業や組織はたいてい、自社が掲げる気候中立目標を達成する目的のためだけにCO2クレジットを購入している。二酸化炭素除去を推進する立場の人々は、政府がさらに需要を下支えしなければ、このプログラムで資金を得た施設の一部は存続できず、そもそも建設されない可能性さえもあると危惧している。

ビル・ゲイツが支援する気候・クリーンエネルギー団体「ブレークスルー・エナジー(Breakthrough Energy)」は、初期段階にある二酸化炭素除去産業が失速しないようにするため、需要支援の強化を政府に求めるコメントを発表した。MITテクノロジーレビューはこのコメントを入手した。

「技術的なコストを下げようと努力する一方で、実際には非常に高額な費用をいとわないごく少数の企業に完全に依存しているのが現状です」。ブレークスルー・エナジーの政策提言部門で炭素管理の責任者を務めるジャック・アンドレアセンはこう話す。「私が恐れているのは、多くの施設を建設しても十分なクレジットを売ることができず、結局は操業停止に陥ってしまうことです」

地域直接空気回収(DAC)ハブ・プログラムは、ジョー・バイデン大統領が2021年後半に署名した超党派のインフラ法を通じて資金供給を受けた。現在までのところ資金を獲得した企業は数社だけで、建設されたプロジェクトは1つもない。また、配分された資金もまだほとんどは支出されておらず、何か問題が起きるとしてもまだ数年先のことになるだろう。だが、エネルギー省が支援するプロジェクトのいずれかが最終的に失敗した場合、投資家の関心は冷え込み、2010年代初頭に起きたソリンドラ(Solyndra)のスキャンダルのような政治的反発が起こる可能性がある。そうなれば、気候、クリーンエネルギー、二酸化炭素除去プロジェクトに対する連邦政府の支援を批判する、新たな根拠が生まれることになるだろう。

「地域DACハブ・プログラムが質の高いプロジェクトを創出し、エネルギー省がそれらの成功を確実にするために全力を尽くすことが、絶対に重要です」。業界を代表する非営利団体「カーボン・リムーバル・アライアンス(Carbon Removal Alliance)」のジアナ・アマドール事務局長はこう述べる。アマドール事務局長によれば、同団体は多くの企業から、特に大規模なプロジェクトについては「引き続き需要が課題になっている」という話を聞いているという。

MITテクノロジーレビューは地域DACハブ・プログラムを監督するエネルギー省のクリーンエネルギー実証局に質問を送ったが、記事の公開までに回答はなかった。

このプログラムを通じてすでに資金を確保した企業のうちの1社、エアルーム(Heirloom)は、自社のプロジェクトに対する需要は十分にあるとしている。だが、同社の声明によれば、今後数年間は各国政府がさらに支援を強化する必要があるという。また、国連の気候パネルに従い、世界の気温上昇を産業革命前の2℃未満に抑えるためには、2050年までに二酸化炭素を年間数十億トン回収する必要があるだろうと指摘した。

「そのような規模の回収は、任意的な市場だけでは達成できないでしょう。国内外で強力な需要側の政策が必要になります」とエアルームは述べている。

ハブ

エネルギー省は昨年夏、初となる一連のDACハブ助成金を発表し、年間100万トンの二酸化炭素を回収する能力を持つ2つのプロジェクトに対し、10億ドル以上を提供することを明らかにした。テキサス州クレバーグ郡でオキシデンタル・ペトロリアム(Occidental Petroleum)が提案する二酸化炭素除去施設と、ルイジアナ州に施設を建設するバテル(Battelle)、クライムワークス(Climeworks)、エアルームの共同プロジェクトである。

ヒートマップ(Heatmap)が 以前報じた通り、エアルームは現在ルイジアナ州で計画している2つのプロジェクトの二酸化炭素回収容量の「かなりの」部分を、JPモルガン・チェース、クラルナ(Klarna)、メタ、マイクロソフト、ストライプ(Stripe)などの顧客企業に事前販売済みだ。

オキシデンタル初の工業規模のDACプロジェクトとなる、テキサス州エクター郡のストラトス・プラント(Stratos Plant)は、2025年の稼働が見込まれている。同社の子会社「1ポイントファイブ(1PointFive)」がこのプロジェクトの開発を進めて …

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