私たちは、人工知能(AI)の未来をめぐる地政学的な競争の初期段階にある。勝者は21世紀の世界経済を支配するだろう。
一方、この議論から必ずと言っていいほど抜け落ちるのは、AIの集中的で安定した電力に対する膨大な需要が、次世代のクリーン・エネルギー技術を拡大する好機であるということだ。この機会を無視すれば、米国はAIとエネルギー生産の未来をめぐる両方の競争で後塵を拝し、世界経済のリーダーの座を中国に譲ることになるだろう。
この競争に米国が勝つには、データセンターに供給するための大量の電力が必要になる。AIデータセンターは、2026年までにニューヨーク市3つ分の負荷に相当する電力を送電網に追加し、2020年代の終わりまでには、米国の電力消費に占める割合が、現在の2倍以上となる9%に達する可能性がある。したがって、AIは米国が数十年にわたって経験したことのない電力需要急増の主因となるだろう。最近のある推計によると、以前は横ばいだった需要は年間約2.5%増加しており、データセンターがその増加の66%を占めている。
この需要増の背後には、エネルギーを大量に消費する高度なAIチップが存在する。チャットGPT(ChatGPT)のクエリーには3ワット時の電力が必要だが、単純なグーグル検索に必要なのはわずか0.3ワット時だ。こういった計算要件ゆえに、AIデータセンターは電力密度が比類なく高くなっており、従来の施設よりもサーバーラックあたりの電力をより多く要し、平方フィートあたりの電力も桁違いに多くなる。オープンAI(OpenAI)のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、ホワイトハウスに対し、300万世帯以上の電力供給に相当する5ギガワットの容量を要するAIデータセンターの必要性を訴えたと伝えられている。また、AIデータセンターには、24時間365日安定した信頼性の高い電力が必要だ。データセンターは1年の99.999%稼働しているのだ。
こうしたギガワット規模のユーザーが電力網に求める需要は、クリーン電力の開発を支える物理的および政治的な構造が拡大する速度を、はるかに上回って急速に加速している。電力網への接続を待つ電力容量は1500ギガワット以上あり、その電力を運ぶための送電線を建設する時間は今や10年に及んでいる。新たな電力源の統合に伴う課題の1つの例として、エネルギー企業のコンステレーション(Constellation)が最近発表したスリーマイル島原子力発電所の再稼働を遅らせている最大の要因が、施設そのものではなく、送電網への接続にかかる時間ということが挙げられる。
クリーン電力供給の拡大という課題に対する反射的な反応は、AIにおける米国の優位性を放棄するか、クリーン・エネルギーへのコミットメントを放棄するかという、誤った選択を迫るものとなっている。この論理は、コンピューティング経済の増大する電力需要を満たす唯一の方法は、天然ガスなどの従来のエネルギー資源の拡大と石炭火力発電所の維持だと主張しているのだ。
化石燃料への依存度を増すことが、生態系に及ぼす悲惨な影響は明らかだ。一方、経済と安全保障への影響も同様に深刻である。他の …