木星の衛星「エウロパ」の居住可能性は? NASA探査機打ち上げへ
木星の衛星「エウロパ」に向けたNASAの探査機「エウロパ・クリッパー」が早ければ10月10日にも打ち上げられる。2030年に木星の周回軌道に到達した後、49回の接近通過飛行を実施し、生命が存在する可能性を詳細に調査する。 by Jenna Ahart2024.10.03
- この記事の3つのポイント
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- NASAは10月10日にエウロパ・クリッパーを打ち上げる予定である
- エウロパには生命に必要な物質があり居住可能性を調べる
- トランジスターの問題を解決し打ち上げの承認を得た
米国航空宇宙局(NASA)は、木星の4番目に大きい衛星「エウロパ」に向かう52億ドルのミッション「エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)」を、早ければ10月10日にも打ち上げる。フロリダのケネディ宇宙センターから、スペースX(SpaceX)の「ファルコン・ヘビー(Falcon Heavy)」ロケットで打ち上げられ、2030年に木星に到達した後、一連の接近通過飛行(フライバイ)を通じて、地球外生命体が存在する可能性のあるエウロパを調査する予定だ。
エウロパは、月のようなクレーターだらけの岩石ではない。表面は氷で覆われており、望遠鏡や宇宙探査機による観測に基づけば、内部には巨大な液体の海があって、地球のすべての海を合わせた量の2倍もの水が存在するという。また、エウロパには、生命の重要な構成要素である炭素、酸素、水素、窒素、リン、硫黄も存在する。これらの条件は、深海か地底湖のどちらかで生命が誕生するのに十分なものである可能性がある。
だが、エウロパ・クリッパーは地球外生命体を探しているわけではない。ミッションチームは、エウロパのハビタビリティ(居住可能性)を評価したいと考えている。エウロパが生命をどの程度うまく支えることができるのか、知りたいのだ。エウロパ・クリッパーは、一連の接近通過飛行でカメラ、分光計、磁力計、レーダーなどのさまざまな科学計器を使い、化学的、物理的、地質学的なデータを収集する。 有望な結果が得られれば、エウロパに着陸して生命を探索するミッションの正当な理由になるかもしれない。
今年初めには、10月に予定されている打ち上げに向けてすべてが順調に進んでいるように思われた。しかし5月、エウロパ・クリッパーの電子機器に潜在的な問題があることが発覚した。この宇宙探査機のトランジスター(探査機の電気の流れを制御する装置)は、地球の2万倍も強い木星の磁場に閉じ込められた荷電粒子の強烈な放射線に耐えられないことが、試験データで示されたのだ。
「ミッションチームは、似たような部品が予想よりも低い放射線量で故障していることを知らされました」。NASAは声明文でこう述べた。この宇宙探査機を分解し、欠陥のあるトランジスターを交換すれば、ミッションの打ち上げ時期が10月を越えてかなりずれ込む可能性があった。
それから数カ月かけ、NASAのジェット推進研究所、ゴダード宇宙飛行センター、応用物理研究所で追跡検査をした結果、可能性のあるトランジスターのどの損傷も、ミッションの運用には支障を与えないと結論づけられた。トランジスターは加熱することでダメージを回復させることが可能であり、大規模な放射線被曝の間隔が20日空いていれば、十分な回復時間が得られると判断されたのだ。ニューヨーク・タイムズ紙によると、エウロパ・クリッパーには、この探査機で使用されているさまざまな種類のトランジスターが入った箱が積み込まれ、研究チームはそれを炭鉱のカナリアのように使ってダメージを監視できるという。9月9日、エウロパ・クリッパーは「キー・ディシジョン・ポイントE」と呼ばれるマイルストーンレビューに合格し、打ち上げに進むことが承認された。
木星を周回する軌道に到達後、エウロパ・クリッパーは49回にわたりエウロパを接近通過飛行する。最接近時には地表から26キロメートル以内の距離に到達し、詳細な観測をする。
エウロパ・クリッパーについて詳しくは、MITテクノロジーレビューの特集記事を参照してもらいたい。
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