KADOKAWA Technology Review
×
イースター島生まれ
「若返りの秘薬」は
本当に効果あり?
カバーストーリー 無料会員限定
Is This the Anti-Aging Pill We’ve All Been Waiting For?

イースター島生まれ
「若返りの秘薬」は
本当に効果あり?

イースター島のバクテリアを由来とする薬の実験動物で、寿命を延ばす効果が確認された。人間の寿命を延ばす効果があるかもしれない。 by Antonio Regalado2017.03.30

薬を飲んで若返ることなどあるのだろうか?

この謎に挑んだ正規の医薬品研究は数少ないが、そのひとつに2014年のクリスマスイブにノバルティスが発表した例がある。ノバルティスは「エベロリムス」という薬を65歳以上の人に少量投与し、インフルエンザ・ワクチンに対してどう反応するかを確かめようとした。

間違いなく、約20%の効果があった。しかし実験の裏の目的は、薬を使うことで老化症状を遅らせたり逆転させたりできるか、だった。ノバルティスのエベロリムスに関する研究は、年配者の免疫システムを若返らせる可能性を目的としていたが「史上初の老化に関する人体実験」ともいわれている。

先週、ベンチャー投資企業ピュアテック(本社ボストン)が発表した内容によれば、ふたつの薬物分子を老化関連疾患への対処に使う権利をノバルティスから取得することになる、という。権利を委託されるスタートアップ企業リストアバイオ(resTORbio)の基幹業務になる。リストアバイオによると、こういった分子を利用した医薬品が、老化した免疫細胞を若返らせる効能があるかどうか、さらに実験を進めるという。

ノバルティスが実験に使ったエベロリムスはラパマイシン(放線菌の一種が産出する有機化合物) から派生したもので、イースター島の土着バクテリアから最初に抽出された。バクテリアの名前はラパ・ヌイで、それにちなんで薬の名前が付いた。免疫システムに対し幅広い効能があるため、ラパマイシンはすでに臓器移植の拒絶反応を防ぐため使われており、抗がん処方薬版としてはノバルティスが「アフィニトール」の名称で販売している。

ラパマイシンが興味深いのは、少なくとも実験動物の寿命を延ばすには最も着実な手段という評判があることだ。ハエや毛虫、げっ歯類の寿命が延びる。マウスにラパマイシンを投与すると平均寿命が25%も伸びるのだ。

ジャクソン研究所のデビッド・ハリソン研究員は「不死身にはなりませんが、効き目はかなり高いです」という。ハリソン研究員はアメリカ国立研究所が老化研究の一環として実施した、介入実験プログラムに参加し、長寿効果があるとみられる医薬品類をそれぞれ別個に1年間マウスに対して投与した。「今までで最も面白い介入実験ですよ。年 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. What’s on the table at this year’s UN climate conference トランプ再選ショック、開幕したCOP29の議論の行方は?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る