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新時代の戦争
ドローン防衛の最前線に立つ
ウクライナの民間専門家
Emre Çaylak
カルチャー Insider Online限定
Meet the radio-obsessed civilian shaping Ukraine’s drone defense

新時代の戦争
ドローン防衛の最前線に立つ
ウクライナの民間専門家

ウクライナの無線技術者であるフラッシュは、ロシアによるウクライナ侵攻以来、前線に足を運んでドローンを調べ、その情報やアドバイスをネットで共有している。新時代の戦争の実験場となった現地での彼の活動は、戦争の未来を決定づけるものになるかもしれない。 by Charlie Metcalfe2024.09.20

この記事の3つのポイント
  1. セルヒイ・"フラッシュ"・ベスクレストノフは民間人の無線専門家である
  2. ウクライナ軍の通信兵を支援するSignalグループを運営している
  3. ドローン戦争の最前線に立ち、ウクライナ軍にアドバイスを提供している
summarized by Claude 3

セルヒイ・"フラッシュ"・ベスクレストノフは前線へ行くことを嫌う。危険を恐れているのだ。「前線に行くなんて、本当にまったくうれしくありません」と、フラッシュは言う。しかし、ロシアのウクライナ侵攻において自らに課した特別な役割を果たすためには、首都北部の郊外にある自宅の比較的安全な場所から、死の可能性がはるかに差し迫っている場所へ行くことが重要だと考えている。「キーウ(キエフ)から本当の状況が見えている人は誰もいません」と、フラッシュは言う。

そこでフラッシュは月に一度ほど、自作の移動無線情報センターを運転して東へ数百キロ移動する。その黒いフォルクスワーゲンのバンには無線機器を山積みしており、使用時にはバンの屋根の上にヤマアラシのとげのように立ち並ぶアンテナに接続する。ダッシュボードには、付近のドローンを監視する小型の装置が2つある。フラッシュは1回につき数日間、空を調査してロシアの無線通信信号を探し、戦場や塹壕にいる兵士たちが直面している問題について知ろうとする。

フラッシュは、少なくとも非公式な立場としてはスパイである。しかし他のスパイとは異なり、自分の仕事を隠していない。実際にフラッシュは、そのようなミッションの結果をいくつかの公共ソーシャルメディアチャンネルに投稿し、多くの兵士や政府関係者を含む12万7000人以上のフォロワーと共有している。たとえば、フラッシュは今年これまでに、一晩でロシアの偵察ドローン5機の存在を記録した様子を紹介した。そのうちの1機は、フラッシュのバンの真上を飛んでいた。

「ウクライナ軍の兄弟たちよ、私はあなたたちにインスピレーションを与えようとしている」と、フラッシュは2月に自身のフェイスブックページに投稿し、ウクライナの兵士たちに対して、自分と同じように敵ドローンの信号の識別方法を学ぶことを奨励した。「あなた方は自らはばたき、時間が経つとともに距離を把握する方法を理解するようになり、いつかの時点で、何十人もの同僚たちの命を救うでしょう」。

ドローンは、2年半以上も続くこの残酷なな紛争を特徴づける存在になった。そしてドローンのほとんどが、無線通信に頼っている。無線通信技術は、フラッシュが子どもの頃から夢中になってきたテクノロジーである。だから元役人のフラッシュは、今は民間人に戻ったものの、自ら進んで、無線に関するあらゆる重要な事柄を祖国の防衛のために伝える役割を引き受けてきた。

フラッシュは公開チャンネルで前線の情報を共有するだけでなく、メッセージング・プラットフォームのシグナル(Signal)で約2000人の軍通信専門家向けに「支援サービス」を運営し、限られた予算内で対ドローン装置を構築するためのガイドを執筆している。「フラッシュは有名人です」と、特殊部隊のある将校は最近、音楽が鳴り響くキーウのテクノクラブで私に大声で言った。フラッシュは「一筋の太陽の光のような存在」であると、ウクライナ軍のある航空専門家は話してくれた。フラッシュによれば、毎日500通もの助けを求めるメッセージを届いているという。

一般の軍人の間で高まるこのような評判にもかかわらず(そしておそらくそのせいで)、フラッシュはウクライナ軍上層部の間では論争の種になっていると、彼は言う。ウクライナ軍は複数回にわたるコメントの要請を拒否したが、フラッシュと彼の仲間たちの主張によれば、一部の高官らはフラッシュを安全保障上の脅威と見なし、彼があまりにも多くの情報を共有していることや、機密情報を守る十分な対策をしていないことを心配しているという。

その結果、フラッシュを支援したり、フラッシュと関わったりすることを拒否する者もいる。フラッシュが存在していないふりをしている者もいると、フラッシュは話す。いずれにせよ、それらの者たちは単に自分自身の貢献の価値に不安を感じているだけであると、フラッシュは考えている。「なぜなら、セルヒイ・フラッシュが国防省の大佐のようにキーウで椅子に座っているわけではないことは、誰もが知っているからです」。フラッシュは苛立った口調で私に話してくれた。そのような態度が彼の典型的な個性であることを、私は学んでいた。

しかし何によりもまして、前線の通信兵やボランティアを含むウクライナの防衛に携わる数多くの人々との何時間もの話を通じて、フラッシュが複雑な性格の人物であったとしても、間違いなく影響力のある人物であることがはっきりとわかった。フラッシュの活動は現場で戦っている人々にとって非常に重要なものとなっている。最近では戦闘への貢献が軍から正式に認められ、その功労に対し2つのメダルが授与された。1つはウクライナの地上部隊の司令官から、もう1つは国防省から贈られたものである。

無線通信への依存度を軽減した半自律型マシンも少数存在するが、戦場の上空を埋め尽くすドローンは、まだしばらくの間、無線技術に大きく依存し続けるだろう。そしてこの生き残りを賭けた競争では、それぞれの陣営が常に他の陣営に勝とうとしており、必然的に他方が追いつけば、また同じことが繰り返されるだけである。ウクライナの兵士たちは、創造的な解決策を迅速に開発する必要がある。ウクライナの戦時無線通信の第一人者であるフラッシュは、そのような解決策を開発するための最良の希望の1つなのかもしれない。

「フラッシュの経歴については何も知りません」と、ウクライナの第110機械化旅団でドローンを扱う"イグロク"は言う(ここでは標準的な軍の慣例に従ってこの人物をコールサインで呼ぶ)。「しかし私は、ほとんどのエンジニアとすべてのパイロットが、無線やアンテナについて何も知らないということを知っています。フラッシュのやっていることは間違いなく、ウクライナの防空を良好な状態に維持している最も強力な力の1つなのです」。

そして、世界の他の地域で軍と武装グループの両方が、ウクライナで開発されたドローン戦術を採用しようとしている。そのことを示す山のような多くの証拠を考えると、フラッシュは自分の国の運命を決めることだけではなく、今後何年にもわたって軍隊が戦争をする方法を決定づけることにも貢献しているのかもしれない。

先見的な趣味

5月に面会した際、質問をする準備が整う前から、フラッシュは自分の車の後部の荷物スペースをかき回して物色し、自らが見せたいちょっとした機材をいくつか引っ張り出した。ひれのような形をしたアンテナが付いたドローンモニター、ロシアの国家安全保障局(FSB)のステッカーが貼られたトランシーバー、米国製エイブラムス戦車のものだろうと言う長さ1.5メートルほどの折りたたみ式アンテナなどだ。

フラッシュは、首都の北側にある巨大な貯水池「キーウ海」のほとりの小さな林道に車を停めた。カーキ色の吸汗速乾性のあるポロシャツにコンバットパンツとコンバットブーツを履き、腰にはグロック19拳銃を下げていた(「敵にとって私は脅威なのです」と、フラッシュは警戒の必要性を感じていることを説明してくれた)。話をしている間、フラッシュはあちこち動き回った。それはまるで、フラッシュが子どもの頃から研究してきた電磁波が、何らかの方法で彼の体の動きをコントロールし始めたかのようだった。

現在49歳のフラッシュは、80年代にキーウ郊外で育った。ソビエト軍の大佐だったフラッシュの父親は、まだ10歳ほどだった息子のために壊れた無線機を持ち帰り、いじくらせたことを覚えているという。フラッシュは最初から才能を示した。課外活動の無線クラブに参加した息子のために父親は、アパートの屋根にアンテナを取り付けた。その後、フラッシュは鉄のカーテンを越え、他の国々の人々と交信し始めた。「それは私にとって、大きな世界への扉を開けたようなものでした」と、フラッシュは話す。

フラッシュは、実家にKGBから手紙が届き、父親を死ぬほど驚かせたときのことを楽しそうに思い出す。父親は知らなかったが、息子が禁止されている無線周波数でメッセージを送り、誰かがそれに気づいたのだ。その手紙が届いた後、フラッシュはキーウ市内にあったKGBの事務所に出頭した。そのときまだ10代だったフラッシュの姿を見て、KGBの職員たちは困惑した。「坊や、ここで何をしているんだ?」と困惑した職員が言った言葉をフラッシュは思い出す。

当時ソビエト連邦の一部だったウクライナは、イノベーションの中心地だった。しかし、フラッシュが1997年に軍事通信大学を卒業する頃、ウクライナは独立から6年が経過しており、軍は汚職と投資不足のせいでかつての威厳を失っていた。フラッシュは軍用無線機工場で1年働いた後、ウクライナ初のモバイルネットワー …

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