KADOKAWA Technology Review
×
10/9「生成AIと法規制のこの1年」開催!申込み受付中
植物で金属を掘る「ファイトマイニング」に米エネ省が研究投資
アリッサム・オボバタム(Alyssum obovatum)は、その組織内に金属を蓄積する約750種ある植物の一つ。
気候変動/エネルギー 無料会員限定
How plants could mine metals from the soil

植物で金属を掘る「ファイトマイニング」に米エネ省が研究投資

米エネルギー高等研究計画局は、植物を使って土壌に含まれる鉱物を凝縮させて「採掘」するファイトマイニングに約1000万ドルの資金を提供する。採掘場を新たに作るのが難しい現在、持続可能な鉱物採掘方法として有望かもしれない。 by Casey Crownhart2024.09.11

この記事の3つのポイント
  1. ファイトマイニングは植物を使って金属を採掘する技術である
  2. 米国エネルギー省の研究プロジェクトは植物によるニッケル採掘の効率化を目指す
  3. ニッケルを多く吸収する植物の探索や改良がされているが課題は多い
summarized by Claude 3

木にニッケルは実らないかもしれないが、いつの日か植物を使ってニッケルを採掘できるようになるかもしれない。多くの植物は金属を自然に吸い上げ、それを組織内に凝縮する。その特性を利用した植物ベースの採掘、「ファイトマイニング(植物採鉱、Phytomining)」の研究を支援するため、新たな資金が注がれる。

7つの植物採鉱プロジェクトが、米国エネルギー省のエネルギー高等研究計画局(Advanced Research Projects Agency for Energy:ARPA-E)から合計990万ドルの資金提供を受けた。その目標は、どの植物が採掘に役立つのかより深く理解し、その植物を研究者がどのように改良すれば、将来必要となるすべての重要な金属を手に入れることができるか見極めることだ。

電気自動車に使われるリチウムイオン電池(バッテリー)に不可欠なニッケルなどの金属の需要は高まっている。しかし、その需要を満たすために新たな採掘場を作るのは難しい場合がある。なぜなら、鉱業業界は歴史的に環境問題などをめぐり地域社会の反発に直面してきたからだ。新たな採掘技術により、重要な金属の供給が多様化され、昔ながらの鉱山に代わる選択肢が提供されるようになるかもしれない。

「新たな巨大工場の開業については誰もが話したがりますが、新たな鉱山の開業について話したがる人はいません」。ARPA-Eのファイトマイニング・プロジェクトのプログラム・ディレクター、フィルソク・キム博士は語る。米国エネルギー高等研究計画局は、業界で採用されている現行の採掘技術から大きく逸脱するものであったとしても、持続可能で責任ある新たな技術が必要だと感じていた。ファイトマイニングはその典型例だ。「ファイトマイニングは奇抜なアイデアです」とキム博士は語る。

おおよそ750種の植物が超集積植物(ハイパーアキュムレーター)として知られている。それらの植物は、大量の金属を吸い上げて組織の中に蓄えるとキム博士は語る。植物は、土壌に含まれるこれらの金属を他の栄養素とともに吸収する傾向を持つが、金属への耐性を持つように適応してきた。

金属を取り込んで凝縮することが知られている種のうち、3分の2以上がニッケルを取り込んで蓄積している。一般に、ニッケルは高濃度で蓄積されると植物に有毒だが、これらの種はニッケルを多く含む土壌で繁殖するように進化してきた。そのような土壌は、世界でも、地質学的プロセスによってニッケルが地表に押し出された一部の地域でよく見られる。

超集積植物であってもやは …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #30 MITTR主催「生成AIと法規制のこの1年」開催のご案内
  2. How “personhood credentials” could help prove you’re a human online オープンAIやMITが「人間の証明」提唱、AIなりすましに備え
  3. What this futuristic Olympics video says about the state of generative AI AI生成動画が描いた、1000年後のLAオリンピック
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る