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気候危機を超えて——未来への戦いに必要なのは「希望」ではない
Israel Vargas
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Fighting for a future beyond the climate crisis

気候危機を超えて——未来への戦いに必要なのは「希望」ではない

気候問題を解決するために私たちに必要な感情は希望ではない。自然の威厳と脆さに対する畏敬の念、人類が引き起こした幅広い変化に対する謙虚さなど、特別な感情が必要だ。 by Lydia Millet2024.08.29

気候崩壊と絶滅の危機について、私が最もよく尋ねられる質問は、「希望を持つにはどうすればいいですか?」というものだ。

Q&Aセッション、メール、ポッドキャストやラジオ番組など、人々はさまざまな場面で私にこの質問を投げかける。私が『子供たちの聖書(原題:Children’s Bible)』(みすず書房刊)や『Dinosaurs』(未邦訳)のような小説、あるいは新作の回想録『We Loved It All: A Memory of Life』(未邦訳)のようなノンフィクションを宣伝しているときでさえもだ。メディアやソーシャルメディア上でもこの質問を何度も目にしているし、作家の友人や科学者、弁護士、活動家、地域活動の主宰者からも、この質問が至る所でなされているという話を聞く。

人々はなぜ、このような質問を投げかけるのか。考えてみた。そして、私たちの多くがこの文化的な時代において、存在を脅かすものに対する感情を、理性や道徳的美徳、あるいは時代遅れに見える市民的・集団的義務の概念よりも優先する傾向にあるという感覚が残った。感情は、霧の中を照らして家へと導いてくれる道しるべである。おそらく、政治的スペクトルの右派には怒りや虐げられた不満の感情があり、左派にはそれに類似する防衛的な自己正義感のようなものがあるだろう。

まるで感情に運命をゆだね、救済を待っているかのようだ。

感情の世界では、希望は絶望から身を守るものだ。冷笑主義は、その合理化された知的なアウトプットであり、未来に対する責任、責任を持って取り組むことや抵抗することの難しさ、不快に感じる可能性に対処する緊張から逃れるためのフリーパスである。しかし、冷笑主義と同様に、希望もまたフリーパスであり、主観の領域を安堵することへの受動的な期待で満たす。ほとんどの場合、「希望」は修辞学的な単位として機能し、「幸福」や「自由」と同じように形のないものとなる。気候変動の終末論や否定論に関する議論の中で、希望とは、容赦ない包囲攻撃を受けている要塞の上に垂れ下がるだけの、ボロボロの旗のようなものだ。もし私たちが希望に頼るのであれば、私たちは行為主体性を放棄することになる。それは魅力的に思えるかもしれないが、同時に降伏を意味する。

感情は、私たちにとって最も有益なギフトではないのかもしれない。他の動物にも感情はあるが、地球を生存不可能な場所にまで根本的に変えてはいない。私たち人類は、感情を、進化への圧力に対する種としての答えである独自の能力と組み合わせることで、地球を生存不可能な場所に変えてきたのだ。これには、コミュニケーションやコラボレーション、私たちが共有する洗練された言語、遠い過去や未来を概念化する能力、そしてものを掴むのに必要な親指を使って道具を作ることのできる能力などがある。これらの能力を併せ持つことで、私たちは帝国や複雑な機械を構築し、深海や遠く離れた熱圏にまで知性を広げてきた。太陽の向こうに至るまでだ。

しかし、私たちが選択したミッションは、欲望と、その欲望を私たちの資源基盤の占有と現金化に投影することを正当化するために構築したアイデアの枠組みによ …

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