KADOKAWA Technology Review
×
期間延長!9/16まで。
【夏割】ひと月あたり1,000円で読み放題
米ドローン「目視外飛行」解禁で、空から配達が現実に?
Bruce Bennett/Getty
Why you're about to see a lot more drones in the sky

米ドローン「目視外飛行」解禁で、空から配達が現実に?

米国でドローンの「目視外飛行」をするには、その都度、米国連邦航空局の許可を得る必要があった。だが同局が9月に告示予定の規則案では、その規制が緩和され、警察署から配送業者に至るまで大きな影響が及ぶ可能性がある。 by James O'Donnell2024.08.23

この記事の3つのポイント
  1. FAAが目視外飛行に関する規則制定案告示を9月16日までに発表する予定
  2. 規則制定により警察や配達業者などによる目視外飛行が容易になる可能性
  3. ドローンの目視外飛行の増加はプライバシー面での大きな影響も
summarized by Claude 3

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

ドローンのニュースをよく見ている人なら(そうでないとしても特に問題はないが)、ここ数カ月間、米国連邦航空局 (Federal Aviation Administration:FAA)の動きが活発になっていることに気づいたかもしれない。共有空域や人口密集地でドローンを飛ばす自由を求める熱心なドローン支持者たちにとって、FAAは何十年もの間、目の上のコブのような存在だった。FAAの規則により、ドローンによる荷物の配達のような未来的なアイデアを大規模に実現するのは困難だったからだ。

しかし最近、その状況が変わりつつある。FAAは最近、アマゾンの「プライム・エア(Prime Air)」プログラムに対し、テキサス州の一部でパイロットが目視外飛行(目視可能な範囲を超えてドローンを飛行させること)をする許可を与えた。FAAはまた、米国内の何百もの警察署にも同様の規制免除を与え、警察は何キロも離れた場所からドローンを飛ばせるようになり、プライバシー擁護派の怒りを買うこととなった。

FAAがより多くの規制免除を与えていることは注目すべき動きだが、今後1カ月もしないうちにはるかに大きな変化が訪れそうだ。それは、近年で最も重要なドローンに関する決定となり、米国で日常的に上空を飛び交うドローンの数を決定するものになると予想されている。

FAAは(期限を守るとすれば)9月16日までに、ドローンの目視外飛行が認められるかどうかについて、規則制定案告示を出さなければならない。警察や配達業者などに対してその都度規制免除を発行する代わりに、該当空域を利用するすべての人に適用され、ドローン同士が衝突したり、ドローンが落下して下の人や物を傷つけたりする安全上のリスクを最小限に抑えることを目的とした規則を提案することになる。

FAAは当初、規則を2018年に策定するよう指示されたが、まだ実現できていない。9月16日という期限は、5月に制定された最新のFAA再授権法によって設けられた。FAAは規則案を発表してから16カ月以内に最終規則を発表する必要がある。

誰がこのような重要な規則を作成することになるのだろうか。規則制定委員会は87の団体で構成されている。その半数は、アマゾンやフェデックス(FeDex)のような商業目的でドローンを利用する企業、スカイディオ(Skydio)のようなドローンメーカー、あるいはエアバス(Airbus)やT-モバイル(T-Mobile)のようなその他の技術的利害関係者である。また、米国自由人権協会(ACLU:American Civil Liberties Union)のようなプライバシー保護団体や学術研究者も含まれる。

FAAの規則案が具体的にどのようなものになるのかは不明だ。しかし、ドローン分野の専門家によれば、FAAはドローンに対してかなり寛容になってきており、今回の規則制定もそうした変化を反映したものになるだろうとのことだ。

もしこの規則によって目視外飛行が容易になれば、ほとんどすべてのタイプのドローン・パイロットが、制限の緩和による恩恵を受けることになる。捜索救助パイロットのような団体は、緊急事態にすばやく取得することが困難なFAAの規制免除がなくても、荒野で行方不明者を見つけるためにドローンを利用しやすくなるはずだ。

しかし、パイロットの姿がどこにも見当たらない状態で空を飛ぶドローンが増えれば、それは大きな影響をもたらすことになる。「(提案された規則は)おそらく、幅広いドローン操縦者に、目視範囲を超えたさまざまなドローン飛行を許可することになるでしょう」と、米国自由人権協会の言論・プライバシー・テクノロジー・プロジェクトで上席政策アナリストを務めるジェイ・スタンリーは話す。「アマゾンやUPSから、ブリトー(メキシコ料理の一種)をドローンで宅配するローカルな『ブリトーコプター』といった配達業者に至るまでの多数の配達ドローン、地方自治体の調査や規範強化のための飛行、これまでになかったさまざまな警察の監視活動などのために空が開放される可能性があります」。

ドローン分野の今後の展望については、こちらをお読みいただきたい。


AI関連のその他のニュース

  • 人工知能(AI)が間違った方向に進むあらゆる可能性を列挙した新しい公開データベースが登場。AIリスク・リポジトリ(AI Risk Repository)は、先進的なAIシステムがもたらしうる700以上の潜在的リスクを文書にまとめたものだ。AIリスクリポジトリは、先進的AIモデルの開発と導入によって発生する可能性のある、これまでに特定された問題点に関する最も包括的な情報源となっている。(MITテクノロジーレビュー
  • 「ディープフェイクのイーロン・マスク」はいかにしてインターネット最大の詐欺師になったのか? AIで作られたマスクは、何千もの偽の広告に登場し、数十億ドル規模の詐欺被害を生んでいる。(ニューヨーク・タイムズ紙
  • グーグルの対話型アシスタント「ジェミニ・ライブ」が登場。5月に初めて披露されたグーグルの「ジェミニ・ライブ(Gemini Live)」は、オープンAI(OpenAI)の「GPT-4o」に対抗しうる最新のAIモデルだ。このモデルはリアルタイムで会話ができ、応答の途中で中断して質問することもできる。グーグルは8月13日、ついに「ジェミニ・ライブ」の提供を開始した。(グーグル
人気の記事ランキング
  1. A new way to build neural networks could make AI more understandable ニューラルネットの解釈性を高める新アプローチ、MITなど提案
  2. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #30 MITTR主催「生成AIと法規制のこの1年」開催のご案内
  3. A skeptic’s guide to humanoid-robot videos すごすぎる人型ロボット動画、騙されないためのチェックポイント
  4. How “personhood credentials” could help prove you’re a human online オープンAIやMITが「人間の証明」提唱、AIなりすましに備え
ジェームス・オドネル [James O'Donnell]米国版 AI/ハードウェア担当記者
自律自動車や外科用ロボット、チャットボットなどのテクノロジーがもたらす可能性とリスクについて主に取材。MITテクノロジーレビュー入社以前は、PBSの報道番組『フロントライン(FRONTLINE)』の調査報道担当記者。ワシントンポスト、プロパブリカ(ProPublica)、WNYCなどのメディアにも寄稿・出演している。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る