警察監視から医療配送まで、
ドローン活用4つのトレンド
センサー技術の発展や部品の価格低下によりますます安価で高性能になったドローンはさまざまな分野で使われている。近未来のドローン技術活用を読み解くカギになる、警察での活用、迅速な配送、サプライチェーン改革、自律兵器の4つのトレンドを説明する。 by James O'Donnell2024.08.21
ドローンは過去10年以上にわたり、軍事、趣味、緊急救援の現場で主力テクノロジーとして投入され、その用途は爆発的に増加してきた。もはやバッテリー寿命の短い小型クアッドコプターだけではない。ドローンは捜索・救援活動を支援し、ウクライナやガザの戦況を変化させ、一刻を争う医療物資の輸送に活用されている。そして、次世代の完全自律システムの開発を目指し、数十億ドルの資金が投じられている。
こうした展開から数々の疑問が浮かぶ。人口密度の高い地区や都市の上空にドローンを飛ばすのは、十分に安全といえるのだろうか。イベントや抗議集会の際に警察がドローンを飛ばすのは、プライバシーの侵害ではないだろうか。交戦地帯でドローンの自律性をどこまで認めるべきかを、誰が決めるのか。
こうした疑問はもはや仮定の話ではない。ドローンやセンサーのテクノロジーの発展、価格低下、規制緩和により、ドローンはますます安価に、高速に、高性能になりつつある。近未来のドローンテクノロジーに訪れるであろう、4つの大きな変化を以下に見ていこう。
1. 警察ドローン隊
警察の監視テクノロジーのデータベースである「アトラス・オブ・サベイランス(Atlas of Surveillance)」の調査によれば、現在、米国内の1500以上の警察組織にドローン・プログラムが設置されている。訓練を受けた警察のパイロットが、捜索・救援活動、イベントや群衆の監視といった目的にドローンを使用している。たとえば、アリゾナ州のスコッツデール警察は、ドローンを使用して認知症を患った高齢の行方不明者を発見したとリッチ・スラヴィン副本部長は語る。同副本部長によれば、これまでのところ同警察のドローン利用の実績は限られたものながら、有効に機能してきた。しかし、米国連邦航空局 (FAA:Federal Aviation Administration)の「視界内」ルールが足枷になることも多かったという。このルールは、パイロットは常にドローンを視界に入れておかなければならないというもので、ドローンの飛行範囲を著しく制限する。
だが、それがまもなく変わる。数カ月以内に、スコッツデール警察は街のどこかの屋上に、離陸、飛行、着陸を自律的におこなう新型の警察ドローンを配備する予定だ。スラヴィン副本部長によれば、同警察はドローンを視界の外に飛ばすことを認める米国連邦航空局 からの許可を待っている段階だ(2019年に最初の許可が与えられて以来、数百の警察組織が米国連邦航空局 から許可を取得した)。このドローンは最高時速57マイル(約92キロメール)で飛行し、ドッキングステーションから3マイル(約4.8キロメートル)以内の場所で活動する。スコッツデール警察によれば、ドローンは容疑者の追跡や、車両停止の最中の警察官が応援を待つ際の状況確認などに使用される。
「米国連邦航空局 は警察がこうした分野に進出することに、以前と比べてずっと理解を示すようになりました」と、スラヴィン副本部長は言う。つまり、警察ドローンが上空を飛び回る光景(と音)は、これから全米でますますありふれたものになる可能性がある。
スコッツデール警察は今後、エアロドーム(Aerodome)のドローンを使用して緊急救援ドローンプログラムを立ち上げるとともに、同署に新設する「リアルタイム犯罪監視センター」でも活用していく方針だ。米国の警察組織においてこのような監視センターはますます一般化しつつあり、自治体は監視カメラ、ナンバープレート読み取り機、ドローン、その他の監視手法を組み合わせ、臨機応変に状況を把握している。監視センターの台頭と、それに付随するドローン依存は、プライバシー擁護団体から批判を受けている。ドローンやその他のシステムを通じて得た映像の利用や共有に関する透明性が確立されないまま、膨大な監視活動が展開されているというのだ。
2019年、カリフォルニア州のチュラビスタ警察は、全米で初めて米国連邦航空局 からドローンの目視外飛行の許可を得た。このプログラムをめぐっては、警察は映像の収集や利用について説明責任を果たしていないとして、住民からの批判があがった。
米国自由人権協会(ACLU:American Civil Liberties Union)の言論・プライバシー・テクノロジー・プロジェクトで上席政策アナリストを務めるジェイ・スタンリーは、米国連邦航空局の許可により、以前からあったドローンとプライバシーの問題はより深刻化したと述べる。米国連邦航空局 がこのまま許可を与えつづければ、プライバシーの侵害にあたるかどうかの法的背景が曖昧なまま、警察はこれまで以上にドローンによる都市監視の範囲を拡大するだろう。
「このテクノロジーの多目的使用の実績が積み重なっていけば、いずれわたしたちは、玄関のドアを開けた瞬間から、司法当局による上空からの監視の目に常にさらされる世界に暮らすはめになるでしょう」と、スタンリーは警鐘を鳴らす。「大きな恩恵があるのは確かでしょうが、抑制と均衡が早急に必要です」。 …
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