夜に蓄え、昼に冷やす ピーク電力需要を抑える冷房システム
暑い夏にはエアコンの電力需要が急増して送電網に大きな負荷をかけており、ピーク時の負荷を軽減するために計画停電を余儀なくされることもある。冷却力を蓄えておく新たな冷房技術により、この問題を解決できるかもしれない。 by Casey Crownhart2024.08.08
- この記事の3つのポイント
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- 冷房システムは世界の建物の電力需要の20%を占めている
- ノストロモ・エナジーは、氷の凍結と融解を利用してエネルギーを貯蔵
- 新しい冷房テクノロジーは送電網への負担を軽減できる可能性がある
暑い日に気温が上昇すると、多くの人は扇風機やエアコンをすぐに強める。冷房システムは送電網に大きな負担をかける可能性があることから、エネルギーを使用するだけでなく、蓄えることもできる冷房システムの開発に取り組んでいる発明家たちがいる。
冷房システムは、世界の建物の電力需要の20%を占めている。この割合は、地球が温暖化し、より多くの国々や地域が冷房テクノロジーを導入するにつれて増加すると予想されている。現在、世界の一部の地域では、電力需要のピーク時に、送電網の総需要の半分以上をエアコンが占めることもある。
エネルギー貯蔵機能を組み込んだ新しい冷房テクノロジーは、再生可能電力が利用可能で需要が少ないときにエネルギーを貯め、送電網に負荷がかかっているときに冷房サービスを提供することで、電力需要増加の問題解決に役立つ可能性がある。
「私たちは、この問題を溶液で解決しようと考えています」。ノストロモ・エナジー(Nostromo Energy)の創業者で最高技術責任者(CTO)のヤロン・ベン・ヌンは話す。
「アイスブリック(IceBrick)」と呼ばれるノストロモ・エナジーのシステムの一つは、簡単に言えば巨大な製氷皿である。水とグリコールでできた溶液を冷却し、その溶液を使い、水で満たされた個々のカプセルを凍らせる。1つのアイスブリックは、数千個のこうした容器から成り、それぞれの容器に約2リットルの水が入っている。
断熱材は、建物の冷却に使うまで、カプセルを凍ったままの状態に保つ。その後、氷は水とグリコールの混合液の温度を下げるために使われ、その混合液が、建物の冷却システムを循環する水を冷却する。ベン・ヌンCTOによると、このシステムは既存の設備に追加できるよう設計されているという。
ノストロモは2023年、米国における初の冷却システムをロサンゼルスのビバリー・ヒルトン・ホテルに設置した。同システムは1.4メガワット時の容量を持ち、隣接するホテル、ウォルドーフ・アストリアにもサービスを提供している。このシステムには、4万個のカプセル(約68トンの氷に相当)が含まれている。エネルギー貯蔵にかかる時間は通常10〜12時間で、夜間に始まり、正午頃に終了する。そのため、電力需要が高く、日が沈むにつれて太陽光発電の電力が低下する午後遅くから夕方にかけて、冷却能力を発揮できる。
アイスブリック …
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