中国の街角に広がる「水素自転車」、さらなる普及には課題も
中国の10以上の都市で「水素自転車」のシェアサイクルが導入されている。リチウムイオン電池を使う電動自転車に比べて安全性が高いとしているが、普及にはまだ課題も多い。 by Zeyi Yang2024.08.09
中国滞在中に市内でシェアサイクルを借りようとすると、少し変わった自転車を目にするかもしれない。水筒サイズの水素タンクが付いた自転車だ。
現在、中国の少なくとも12都市では、水素で動くシェアサイクルが導入されている。従来の自転車よりも乗り心地が良く、エネルギー源はリチウムイオン・バッテリー(電池)よりも安全だ。ある中国企業は、これが公共交通の次の大きな流れになると踏んでいる。一方、水素産業の発展を奨励する政府の政策という国のトレンドに乗っている企業もある。
しかし、その受け止めは分かれている。利用者は現在の水素自転車の乗車体験に満足していないと報告しているし、エネルギーの専門家は電動自転車を水素駆動のものに置き換えることが経済的に理にかなっているかどうか、疑問を呈している。水素は将来、 長距離輸送のための素晴らしい動力源になる可能性はあっても、都市部での自転車には適していないかもしれない、ということとは全く別の問題だ。
水素自転車に取り組んでいる企業は他の国にもある一方で(フランスのある企業はすでに成熟した製品を持っている)、中国は水素自転車を公共交通機関として活用している点で際立っている。中国では2010年代のテックブームで、シェアサイクルが大流行した。アリババやフードデリバリー大手のメイトゥアン(美団)といった資金力のある企業の支援もあり、規格化され、インターネットに接続されたシェアサイクルは、それ以来、都市の通りを埋め尽くし、時には信じられないような無駄を生むこともあった。
300以上の都市で100万台以上の自転車を展開している中国の自転車レンタル企業「ユーオン(永安)」は、自転車シェアリング業界の主要企業の1つだ。熾烈な国内競争に直面する中、同社は2018年から水素自転車に投資することでブランド差別化を図り、現在では4つのモデルが購入またはレンタル可能となっている。
水素自転車のコンセプトは、電動自転車と大きくは違わない。違いは、エネルギーをリチウムイオン電池に蓄えるか、水素タンクにするかだ。
ユーオンの水素自転車は、20グラムの水素を金属粉末の形で貯蔵しており、低圧(10バール以下)タンクでガスを吸収・放出できる。ライダーがペダルを漕ぎ始めると、水素は座席下の燃料電池に供給され、そこで化学反応が起きて電気が発生する。水素自転車は、ピーク時には時速23キロメートルで走れる。水素タンク1本で40~60キロメートル走行でき、タンク交換は数秒で済む。
なぜ水素?
中国では以前から電動自転車が普及しており、公式な記録によると現在約3億5000万台が一般的な通勤者やプロの配達員によって日常的に使われている。
ただ、中国の大都市の多くは、リチウムイオン電池が火災の危険性をもたらすとして、公共交通網の一部として電動自転車を導入することを避けたり、あるいは禁止したりしてきた。2023年、中国の消防当局は合計2万1000件の電動自転車の火災報告を受けたが、これは前年比17.4%増である。
こうした火災は、ユーオンに供給の空白を生じさせた。だが同社は水 …
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