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「もう赤ちゃんは作らない」
遺伝子編集ベビーで服役の
中国人科学者が明かした現在
TR
生物工学/医療 Insider Online限定
Controversial CRISPR scientist promises “no more gene-edited babies” until society comes around

「もう赤ちゃんは作らない」
遺伝子編集ベビーで服役の
中国人科学者が明かした現在

2018年に世界初の「遺伝子編集ベビー」を誕生させて物議を醸した中国の科学者が、MITテクノロジーレビューのオンライン座談会に登壇。3人の子どもの現在の様子や、自身の現在の活動内容、今後の予定などを語った。 by Antonio Regalado2024.08.05

この記事の3つのポイント
  1. 遺伝子編集ベビーを生み出した中国人科学者がオンライン座談会に登壇
  2. 誕生した3人の子は普通の平和で静かな生活を送っていると明かす
  3. 現在は遺伝子編集の研究に戻り、動物とヒトの非生存胚に限定して研究
summarized by Claude 3

史上初の遺伝子編集された3人の子どもを誕生させた2018年の実験で物議を醸した中国の生物物理学者、フー・ジェンクイ(賀建奎=南方科技大学元准教授)。フー元准教授は現在、受胎時のヒトのDNAを改変するというコンセプトの研究に戻っているが、以前とは異なるアプローチを取っていると述べた。

今度は、研究対象を動物と、非生存可能なヒト胚に限定するという。少なくとも、一般的な病気に対する 「遺伝子ワクチン 」の構想を社会が受け入れるようになるまでは、妊娠状態を作り出すつもりはないという。

「遺伝子編集ベビーはもう生まれません。これ以上の妊娠はありません」。フー元准教授はMITテクノロジーレビューが7月25日に主催したオンライン座談会でこう語り、本誌のアントニオ・レガラード医学生物学担当編集者、マット・ホーナン編集長、そして読者からの質問に答えた。

インタビューの中でフー元准教授は過去の研究を擁護し、「唯一の後悔」は妻と2人の娘に迷惑をかけたことだと話した。フー元准教授は規制違反で有罪判決を受けた後、3年間服役したが、2022年に釈放されて以来、科学界の表舞台への復帰を目指してきた。

現在は海南省の三亜市に保有する私設研究室で、希少疾患の遺伝子療法の研究や、いつかアルツハイマー病の発症に耐性を持つ赤ちゃんを誕生させる方法を決定するための実験に取り組んでいるという。

この中国人科学者は、米国と中国の個人、および中国企業からの資金援助を受けており、シリコンバレーに研究会社を設立する提案も受けていると話した。ただし、投資家の名前は明かさなかった。

以下は、座談会の全文書き起こしである。ぜひお読みいただきたい。

マット・ホーナン:皆さん、こんにちは。本日はご参加いただきありがとうございます。私はMITテクノロジーレビューの編集長、マット・ホーナンです。今日はこのようなイベントを開催でき、とてもワクワクしています。すばらしいものになると思います。

本誌の生物医学担当上級編集者であるアントニオ・レガラードと、「JK」の呼び名で知られるフー・ジェンクイ氏をお迎えしています。JKは中国を拠点とする生物物理学者です。CRISPR(クリスパー)を使ってヒト胚の遺伝子を編集し、最終的には遺伝子編集を使ってDNAを調整した最初の子を誕生させました。お二人ともようこそ。

本日ご覧いただいている視聴者の皆さん、もし聞きたいことがあればチャット・ウィンドウで質問してください。盛りだくさんのディスカッションを予定していますが、できる限り多くの質問にお答えしたいと思います。アントニオ、できればあなたから始めようと思います。あなたは6年前、このニュースを世界で初めて伝えました。今日の議論の舞台を整えましょう。このニュースはなぜ重要だったのですか?

アントニオ・レガラード:マット編集長、 ありがとう。

テーマはゲノム編集です。言うまでもなく、胚を含む個々の細胞の中のDNAを改変する技術のことです。その重要性は、いくら大げさに言おうとしても足りません。私は、トランジスタや人工知能(AI)の発明と同列に重要だと考えています。

なぜか? ゲノム編集は、私たちを1つの種として誕生させたプロセスそのものをコントロールする力、少なくともコントロールしようとしてプロセスに指示を出す能力を人間に与えてくれます。つまり、それほど意味深いことなのです。

JKの話をしましょう。2018年に私たちはスクープをしました。JKはその記事をリークと呼ぶかもしれませんが、彼の実験について説明するものです。その実験は、マット編集長が言っているとおり、ヒトの胚を編集してCCR5と呼ばれる特定の遺伝子を削除するものでした。その目的は、HIVに感染している父親を持つ3人の子どもたちに耐性を持たせることでした。中国では、HIVを持つことは不名誉と見なされます。それがこのプロジェクトでした。

もちろん、私たちの記事はすぐに大混乱を引き起こしました。批判的な多くの声と、支持する少数の声が世界中で上がりました。しかし、その影響の1つとして、JKらの研究チーム、および両親や医師たちが、自分たちの研究のことを話せなくなってしまいました。というのも、JKの場合は実際に拘留され、刑務所の中で刑期を全うしていたからです。そこで今日、JKをここに迎え、私たちや読者の質問に答えてもらえることを嬉しく思っています。JK、お越しいただきありがとうございます。

デューク大学のマイケル・ウェイツキン教授など、何人かの人々が、3人の子どもたちの状況を知りたがっています。彼らの健康状態について知っていることは何ですか? それはどこからの情報でしょうか?

フー・ジェンクイ:ルル、ナナ、そして3人目の遺伝子編集ベビーは健康で、普通の平和で静かな生活を送っています。3人は他の人たち、つまり他の幼稚園の子どもたちと同じように幸せです。私は3人の子どもの親たちと常に連絡を取っています。

アントニオ・レガラード:なるほど。JK、あなたは最近Xで、現在はシングルマザーになった親の1人についてコメントしました。それによると、あなたが金銭的な支援をしているそうですね。その状況について話せることはありますか? あなたはそれらの子どもたちにどのような義務があるのですか? そして、その義務を果たすことができますか?

フー・ジェンクイ:3人目の遺伝子ベビーのことですね。その女の子の両親は離婚したので、今は母親と一緒にいます。ご存知のとおり、シングルマザー、ひとり親家庭の生活は楽ではありません。それでこの2年間、私はいくらかの経済的な支援を提供してきましたが、そうすることが正しいのかどうか、あるいは倫理的なことなのかどうかはわかりません。私は科学者もしくは医者であり、彼女はボランティアまたは患者だからです。科学者や医師がボランティアや患者に金銭的な支援を提供するのは、正しいことなのでしょうか? 適切な行為でしょうか? 倫理的なことでしょうか? そういうことは私にはよくわかりません。実際には疑問を抱えています。

アントニオ・レガラード:興味深いですね。これに関しては多くの倫理的なジレンマがありますが、そのうちの1つは、あなたの論文についてです。あなたが作成し、実験のことを説明した科学出版物のことです。そこで2つの質問をします。

まず、倫理面はさておき、あなたの実験を批判した人の中にも、結果を知りたがっている人たちがいます。うまくいったのかどうか知りたいのです。その子どもたちはHIVに耐性があるのかないのか。そこで、第1の質問です。あなたは3人の子どもたちの血液を検査することができますか? あるいは、実験がうまくいったかどうか分かる検査をできる人が誰かいますか? そして2つ目の質問は、査読前論文(プレプリント)やホワイトペーパーを含め、論文を発表するつもりはあるかということです。

フー・ジェンクイ:私は常に、科学研究はオープンかつ透明でなければならないと考えています。だから私は、6年前に書いた論文を発表することに前向きです。

その論文は、何らかの理由でネイチャー(Nature)誌に掲載を拒否されました。しかし私は今も、その2つの論文を査読付き専門誌に掲載してもよいと考えています。そのためには査読を受けなければなりません。それが論文の標準的な発表方法です。

もう1つは、赤ちゃんがHIVに耐性があるかどうかということ。実は、実験を設計した数年前、私たちは赤ちゃんが生まれたときの臍帯血を採取していました。赤ちゃんから採取した臍帯血をHIVウイルスにさらして、実際にHIVに耐性があるかどうか調べるというのが、当初の実験計画でした。しかし、この実験は実現しませんでした。というのも、このニュースが広がり、それ以降、どんな実験もできなくなってしまったからです。

実験結果は喜んで全世界に共有したいと思っています。

マット・ホーナン:ありがとう、アントニオ。読者のカレン・ジョーンズの質問から始めましょう。彼女は、中国の法律に違反したことについて非常に大きな物議を醸したことで、あなたに対する信用がどうなったか知りたいと尋ねています。この質問で、私自身も知りたいことを思い出しました。あなたの研究は、仕事上どのような結果をもたらしていますか? あなたはまだ中国で研究をすることができますか? CRISPRを使った実験はまだできるのですか?

フー・ジェンクイ:はい、研究室で研究を続けています。三亜(海南省)に研究室があります。その前は武漢にも研究室を持っていました。

私の現在の仕事は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーやその他のいくつかの遺伝性疾患の治療を目的とする遺伝子編集に関する研究です。そして、それにはすべて体細胞遺伝子療法を使います。つまり、ヒト胚に対して実施されるものではありません。

マット・ホーナン:その回答は、別の読者ソフィーからの質問につながると思います。ソフィーは、今後も人間で遺伝子編集をする予定があるかどうかを知りたがっています。

フー・ジェンクイ:それで私は、ヒト胚の遺伝子編集を用いてアルツハイマー病を予防する研究プロジェクトを提案しました。この提案は、昨年ツイッターに投稿しました。目標は、マウスとサル、およびヒトの非生存胚で、胚遺伝子編集をテストすることで …

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