2024年8月、米国コロラド州の上空を奇妙な気球が漂うことになるだろう。ピックアップ・トラックの荷台から打ち上げられるこの気球は、地上の熱を測定できるセンサーを搭載し、山火事の発生地点を上空から正確に特定できる。
気球を開発したのは、コロラド州デンバーに拠点を置くスタートアップ企業のアーバン・スカイ(Urban Sky)だ。同社は気球を使って、火災発生前の地上の条件を把握する計画も立てている。ロッキー山脈地域協力センター(Rocky Mountain Area Coordination Center)が公開している2011~2020年のデータによると、コロラド州では年間約960平方キロメートルの山林が焼失している。この新たな高高度ツールにより、人類がこのような火災により適切に対処し、あるいは少なくともより良く理解できるようになることが期待される。
「山火事は自然な生態系の一部です」と、米国航空宇宙局(NASA)で山火事プログラムの責任者を務めるマイケル・ファルコウスキー博士は言う。しかし、気候変動が火災をいろいろな意味で加速させていることが明らかになっている。以前よりも大規模で、より激しい火災が、頻繁に発生するようになっているのだ。また、自然が近くにある場所に住む人々が増えていることや、これまで米国の消火活動で、密生した森林や、古く枯れた樹木を放置してきたといった事情も、火災を拡大させる原因となっている。
最近の火災に対処するには、燃焼中のデータだけでなく、火災発生前と鎮火後のデータも研究者や消防署が収集する必要があるとファルコウスキー博士は指摘する。さまざまなデータを収集することで、リスクを事前に把握して火災発生の可能性を下げることや、発生中の火災の追跡、火災が地域社会や環境にもたらす脅威の把握などが可能になるという。
研究者は、火災が広がる前に植生マップを作成し、湿度や乾燥度を推定することもできる。火災発生中は、燃えている場所と、燃焼温度を示すマップも作成できる。鎮火後は、火災の深刻さを見積もったり、空気の質を調べることも可能だ。
とはいえ、最も急がなければならないのは「実際に燃えている時」であることは明らかだ。火災発生中に、いつ、どこで火が燃え広がっているかを把握することは困難だ。人工衛星が広大な地域を一度に調べることで、役立つ部分もある。しかし、政府が運用している主な人工衛星は、1ピクセルがおよそ300メートル四方にもなる、解像度が低い画像しか撮影できない。さらに軌道上の位置が悪いと画角が狭くなり、特定の場所の画像を、まさしく狙い通りの時間に撮影できるわけではない。
飛行機やヘリコプターを使えば、火災の範囲をより詳細に把握できるが、運用コストがかさみ、飛行には危険が伴う。ほかの航空機との連携しながら …