実質ゼロ宣言のアマゾン、撤回のグーグル 両社の気候対策の違いは?

Google, Amazon and the problem with Big Tech's climate claims 実質ゼロ宣言のアマゾン、撤回のグーグル 両社の気候対策の違いは?

企業の気候汚染に対する取り組みは、温室効果ガス排出量の「実質ゼロ」達成で評価されてきた。だが、早期達成を宣言したアマゾンに対して、グーグルは主張を撤回するなど、企業によるアプローチに違いが出てきている。その新たな潮流を解説する。 by James Temple2024.07.26

アマゾンは7月上旬、全世界のオフィス、データセンター、食料品店、倉庫のエネルギー需要をまかなうのに十分な量のクリーン電力の購入と、同社が掲げている持続可能性目標の7年早い達成を大々的に発表した。

直近ではこのニュースに先駆けて、グーグルが人工知能(AI)運用によるエネルギー需要の急増により昨年、同社の温室効果ガス排出量が13%増加したことを認めており、すでにカーボン・ニュートラルを達成したとの主張を撤回した。

これらの発表を額面通りに受け取るなら、気候汚染の浄化に向けた競争においてグーグルはつまずき、アマゾンは勢いに乗って前進しているという話になる。

だが両社ともそれぞれに足りない部分はありながらも、現時点ではグーグルの温室効果ガス排出量削減へのアプローチの方が擁護できる内容だと言っていい。

実際、企業がどれだけ早く実質ゼロを達成するかよりも、どのようにして達成するかの方が重要だとする意見が日増しに増えている。また、企業の実質ゼロ・モデルを越えようという、新たな考え方も現れてきている。企業は排出している二酸化炭素量の帳尻を合わせることに努めるよりも、より幅広く気候に影響を与えることに注力すべきだという主張である。

その理由を理解するために、まずこの2つの巨大テック企業のアプローチの違いを比較し、企業の気候戦略はどこでしばしば間違うのかを検証してみよう。

屈折したインセンティブ

問題の核心は、企業がサプライチェーン全体での気候汚染を削減または帳消しにすることを求められる実質ゼロ排出計画のコストと複雑性により、屈折したインセンティブが生まれる点にある。企業の持続可能性担当者たちは、とりわけ信頼性の高い方法で現実世界の温室効果ガス排出を削減するよりも、書類上で企業による汚染をクリーン化する最も手早く安価な方法を追い求めることが多い。

その内容は、温室効果ガスの排出をその発生源において削減するという、より困難な課題に取り組むのではなく、安価な炭素クレジットを購入するということだ。つまり、直接的な企業活動、あるいはサプライヤーによる継続的な汚染を、炭素クレジットで相殺する方法である。こうしたプログラムは、他の団体に資金を提供して植樹や沿岸部の生態系の再生を促進させたり、農業の方法を変更したりして温室効果ガスの排出を削減するか、空気中から二酸化炭素を取り除くことを目指す取り組みが含まれる。問題は、大量の研究や調査報道により、こうした取り組みの気候への恩恵は誇張されていることが多く、誇張の度合いが極めて大きい場合もあることが明らかになっている点だ。

また実質ゼロ目標は、企業に「再生可能エネルギー証書(RECs)」の購入を強いることになる可能性もある。表向き、RECsは再生可能電力の発電量増加を支援するものだが、気候への恩恵が誇張されている懸念も生まれている。

送電網事業者は天然ガスや石炭、太陽光、風力といったミックスされたエネルギー源を利用して電力を供給しているのだから、一般企業が事業に必要な電力を純粋なクリーン電力として購入することは難しい、というのがRECs擁護派の主張だ。企業が資金を提供したり、需要の兆候を示したりすれば、デベロッパーによる新たな再生可能エネルギー事業への取り組みに拍車をかけ、そうでなかった場合よりも多くのクリーン電力が生み出されることになる。それによって、企業は自分たちが利用している電力からの現行の汚染を相殺したと主張できる——というのが擁護派のロジックだ。

だが現段階で、専門家らはRECsの価値にますます疑問を抱いている。

ノートルダム大学のエミリー・グルバート助教授は、追加の支援がなければクリーン・エネルギー事業は成立し得なかっただろうという主張は、クリーン・エネルギー施設が市場における競争力を持つにつれて、日増しに説得力を失っていると以前語っていた。もし企業がクレジットを購入しても大気中への温室効果ガス排出削減につながらないのであれば、企業による現行の汚染を相殺することはできないはずだ。

「粉飾決算」

アマゾンの話に戻ると、同社は炭素クレジットとRECsの両方に依存している。

アマゾンは持続可能性報告書において、エネルギー効率の改善、カーボンフリー電力の購入強化、自社施設における再生可能エネルギー・プロジェクトの立ち上げ、それに世界各地で同様のプロジェクトを支援することで、クリーン電力目標の達成と温室効果ガス排出削減を実現したと述べている。その一環として、「当社が契約しているプロジェクトにおいて予想される発電量に沿う形で、付加的な環境要素(RECsなど)を購入し、当社が活動している地域の送電網における再生可能エネルギーに対する支援を示している」ことを挙げている。

だがRECsを通じてであれ、プロジェクト立ち上げ前に締結された電力購入合意を通じてであれ、企業が直接消費していない低炭素電力に資金を出すことでまた別の問題が生じる可能性がある。世界のどこかで、いずれかの時点で発生した再生可能電力の発電に金を払うだけでは、その企業が特定の場所と時間に消費した分の電力を調達することと同じことにはならないからだ。当たり前だが、アマゾンの従業員が世界中で身を粉にしながら24時間絶えず働き続けている間にも、太陽は沈み、風は止むのだ。

すでに日中に発電する予定だった太陽光発電所の事業者に対して追加で金を払っても、例えば、アマゾンのフルフィルメント・センターやサーバーファームが、夜間に2つ離れた州の天然ガス発電所からの電力を利用して稼働した結果排出された温室効果ガスを、意味のある形で無効化できるわけではない。

「データセンターが化石燃料の需要に拍車をかけているのが現実です」。労働者団体「気候正義を求めるアマゾン従業員(Amazon Employees for Climate Justice)」が7月上旬に発表した報告書は論じている。同団体はアマゾンに対し、気候変動に関してより積極的な行動を取るよう働きかけてきた。

「気候正義を求めるアマゾン従業員」は、アマゾンのRECsの大部分は新規プロジェクトの開発を促進していないと述べている。またそうした資金提供やプロジェクトは、アマゾンが電力 …

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