石炭火力発電所の新設数が減少、地球温暖化は止められる?
今後建設予定の石炭火力発電所の数が減少している。しかし、厳しい税が課されなければ、人類は石炭を燃やし続けるだろう。 by Jamie Condliffe2017.03.24
2015年から石炭火力発電は停滞中だ。
グリーンピースとシエラクラブ、研究機関コール・スワームが実施した新たな分析によれば、世界で新設された石炭火力発電所の数は昨年、前年比で62%減少した。また、石炭火力発電所を新設する前の計画数で見ても、48%減少しているという。
新設される石炭火力発電所が減っているのは、おもにインドと中国が原因のようだ。両国はこれまで凄まじい勢いで石炭火力発電所を新設してきたが、現在、新たな建設計画は抑制されている。中国は100件以上の石炭火力発電所計画を停止し、炭鉱労働者を解雇した。インド政府の資料には、インドには現在建設中の石炭火力発電所だけで十分だと示されている。
分析結果によると、石炭火力発電所の稼働率はかつてないほど急速に低下しており、過去2年間、主にヨーロッパと米国で64ギガワット分の発電能力が利用されなかったという。
一見すると、この分析結果はよい知らせに見える。石炭は、生成されるエネルギー当たりの二酸化炭素排出量がすべての化石燃料の中で最大であり、世界の多くの地域で致命的な大気汚染の原因だ。環境への悪影響は石炭への依存を減らせば緩和され、パリ環境協定で定められた目標達成に向けて、世界各国が結束することにもつながるだろう。
しかし、石炭発電産業が廃れたとまではいえない。石炭火力発電所の新設計画は減っているかもしれないが、今後数年間で計画されている石炭火力発電所の発電能力はそれでも570ギガワットに上る。計画されている発電能力は2016年1月に計画されていた1090ギガワットよりも減少しているが、570ギガワットは数百基の新たな石炭火力発電所に相当する。
石炭火力発電が減少する見通しに、今後米国がどのような影響を与えるかは不明だ。トランプ大統領は米国の石炭産業の復興を望んでいると主張しているが、MIT Technology Reviewのジェームス・テンプル記者がいうとおり、天然ガスが安価で豊富な限り、トランプ大統領の約束は口先だけだ。
アメリカ以外では事情は異なる。世界石炭協会のベンジャミン・スポートン会長は、アジアの多くの地域で「エネルギーミックスから石炭火力発電を除外することは選択肢にはなりません。石炭火力発電は経済成長に不可欠であり、エネルギーの利用を保証するのに重要です」とガーディアン紙に述べた。
スポートン会長の主張のうち、経済成長については必ずしも正しいとはいえない。しかし、大きな税が課せられなければ、多くの国にとって石炭火力発電が魅力的なのは確かだ。
(関連記事:Boom and Bust 2017, The Guardian, “Will We Ever Stop Using Fossil Fuels?,” “トランプ政権は、炭鉱労働者の希望と地球の未来を粉砕する,” “大気汚染で年間死者約110万人のインドは世界最悪の状況”)
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- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。