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生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
Stephanie Arnett/ MIT Technology Review | Getty, Public Domain
AI can make you more creative—but it has limits

生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに

生成AIは、人間の創造性にどのような影響を与えるのだろうか。ある研究によると、レベルの底上げにはつながるものの、元々創造性の高い人にはほとんど影響がないことが明らかになった。 by Rhiannon Williams2024.07.19

この記事の3つのポイント
  1. 生成AIは文章や画像の作成を容易にするものの人間の創造性向上には限界
  2. 創造性の低い人の作品の質は向上する一方、創造性の高い人の質は変わらない
  3. AIを利用して作られた物語は人間だけで作ったものより似通る傾向に
summarized by Claude 3

生成AI(ジェネレーティブAI)モデルのおかげで、文章や画像、映像クリップや音声トラックにいたるまで、あらゆるものをよりシンプルかつ素早く作成できるようになった。人間が作ったら何年もかかるかもしれない文章やメディアが、今では数秒で生成できる。

確かにAIが作るものは一見創造的なもののようではある。だが、生成AIモデルは実際に人間の創造性を高めるのだろうか。

サイエンス・アドバンシス(Science Advances)誌に7月12日付けで発表された新たな研究では、2人の研究者がこのことに関する調査を実施した。人々がどのようにオープンAIの大規模言語モデル「GPT-4」を使って短編の物語を書くかを調べたのである。

結果として、GPT-4は役に立った。しかし、それには限界があった。AIを利用することで比較的創造性の低い人の作品の質は向上したものの、もともと創造性の高い人が作る物語の質にはほとんど違いが生まれなかったのだ。また、AIを利用して作られた物語は、すべてを人間が考えて作った物語よりも互いに似通ったものになった。

生成AIがどのように人間の創造性に影響を与えるかを調査する研究は増加しており、この研究もそれに加わるものだ。今回の研究結果が示唆しているのは、AIの利用は個人の創造性を高める可能性があるが、全体としては創造性を低下させるということである。

生成AIが人間の創造性に与える影響を理解するためには、まず創造性の測定方法を決定する必要がある。この研究では、新規性と有用性という2つの指標が用いられた。新規性とは物語の独創性を意味する。一方で、ここでいう有用性とは、出来上がった短編作品が本やその他の出版物に発展する可能性を反映する指標となっている。

研究者はまず、研究プラットフォーム「プロリフィック(Prolific)」を通じて293人の参加者を集め、その人が本来持っている創造性を測定するために作ったタスクを実行させた。参加者は、できるだけ互いに異なる単語を10個書くよう指示された。

彼らは次に、ジャングルでの冒険、大海原での冒険、あるいは別の惑星での冒険という3つのトピックのうちの1つについて、若者向けの8文からなる物語を書くよう求められた。しかし、まず初めに、参加者は3つのグループに無作為に振り分けられた。1つ目のグループは自分のアイデアだけで物語を書かなくてはならなかったが、2つ目のグループにはGPT-4に物語のアイデアを1つ提示してもらうという選択肢が与えられた。3つ目のグループには、GPT-4に物語のアイデアを最大5つまで提示してもらうという選択肢が与えられた。

AIによる支援の選択肢を与えられた参加者は、88.4%という大多数が利用した。その後、参加者は自分が作った物語がどれだけ創造性のあるものであったかを評価するよう求められた。これは、600人からなる別の査読者のグループが彼らの作品を評価する前に実施された。査読者はそれぞれ6つの物語を見せられ、それらの文体の特徴、新規性、有用性について感想を求められた。

その結果、GPT-4を最も多く利用できる選択肢が与えられた参加者のグループが、最も創造性が高いと評価されたことがわかった。さらに、最初のテストで比較的創造性が低いと判断された参加者たちがAIによる恩恵を最も受けていた。

しかし、もともと創造性の高い参加者が作った物語には、同じような効果は見られなかった。「創造性が最も低い参加者たちが最大の恩恵を得るという平準化効果が見られます」と、この論文の共著者である英国UCL経営大学院のアニル・ドシ助教授は言う。「しかし、もともと創造性の高い人々には、AIを利用したことによる恩恵は何も見られません」。

すでに創造性の高い人は創造的になるためにAIを使う必要がないことを考えると、この結果は理にかなっていると、AIと創造性を専門とするコロンビア大学のコンピューター科学研究者であり、この研究には関与していないトゥヒン・チャクラバーティ助教授は言う。

生成AIモデルの助けを借りることには、いくつかの潜在的な欠点もある。AIが生成した物語は全体的に、意味的にも内容的にも似ているとチャクラバーティ助教授は語る。また、AIが生成した文章は、非常に長く、説明的で、ステレオタイプを多く含む文などの特徴がはっきりと見られる。

「おそらくこういった特異性も、AIが作る物語の創造性を全体的に低下させている要因でしょう」とチャクラバーティ助教授は言う。「良い文章とは、説明するものではなく、想像させるものです。AIは常に説明しています」。

AIモデルによって生成された物語は、そのモデルの訓練用データの範囲でのみ作られるものであるため、この研究でAIの助けを借りて作られた物語は、人間の参加者が完全に自分で考え出したアイデアに比べて、独自性に劣るものであった。もし出版産業で生成AIが使われるようになるとしたら、私たちが読む本は今よりも均質的なものになるかもしれない。なぜなら、それらはすべて同じコーパスを元に訓練されたモデルで生成されることになるからだ。

そのため、急速に進化する生成AIテクノロジーが社会や経済にとって何を意味するのかを解明する中で、AIモデルには何ができるのか、さらには何が上手くできないのかを研究することが不可欠であると、エクセター大学ビジネススクールの教授であり、この研究のもう1人の共著者でもあるオリバー・ハウザーは言う。「テクノロジーが変革をもたらす可能性があるからといって、必ずそうなるとは限りません」。

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リアノン・ウィリアムズ [Rhiannon Williams]米国版 ニュース担当記者
米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」の執筆を担当。MITテクノロジーレビュー入社以前は、英国「i (アイ)」紙のテクノロジー特派員、テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を務めた。2021年には英国ジャーナリズム賞の最終選考に残ったほか、専門家としてBBCにも定期的に出演している。
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