主張:AI研究における学術界の役割強化、計算資源の不均衡是正を
大規模基盤モデルをはじめとする最新のAI技術開発には莫大なコストがかかるため、現在は民間企業が主導している。だが、AIを長期にわたって発展させ、真のイノベーションを実現するには、大学に力を与えてAI研究の最前線に立たせ続けることが不可欠だ。 by MIT Technology Review Editors2024.07.08
- この記事の3つのポイント
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- 学術界と産業界のAI研究における計算資源の不均衡を是正する必要がある
- 米国政府は学術機関のGPU利用コストを下げる方法を模索すべきだ
- 学術界のコンピューティング能力への投資がイノベーション促進に不可欠だ
現在、人工知能(AI)分野は革命的な進化を遂げている。そこには、仕事のやり方から健康維持のためにすべきことに至るまで、私たちの生活を劇的に向上させる可能性が潜んでいる。とは言うものの、米国をはじめとする民主主義国が今後のAI技術の道筋を確実に描けるようにするためには、民間企業が現在取り組んでいる技術開発だけでは足りない。
現在起こっている商業的なブームの基礎を築いたのは、大学での研究によってもたらされたAI分野の進展である。重要な点として、学術界は先駆的なAI企業のリーダーも輩出している。
だが現在、チャットGPT(ChatGPT)やクロード(Claude)、ジェミニ(Gemini)のような大規模基盤モデル(LFM)に要する計算能力があまりも膨大で、大量のデータも必要とするため、AIの最前線において学術界が民間企業に取って代わられている。米国の大学に力を与え、民間企業とともにAI研究の最前線に立てるようにすることは、AI分野の長期的な可能性を実現させるために重要となるだろう。そのためには、コンピューティング資源の利用における学術界と産業界との大きな不均衡を是正する必要がある。
学術界の最大の強みは、知識の境界線を押し広げるような長期的なプロジェクトや基礎研究を追究できる力にある。大胆な最先端の理論を探求して試行する自由があるため、未来のイノベーションの基礎となる発見や革新が生まれている。LFMが可能にしたツールは私たちの手の内にあるが、それらのツールについては答えを要する質問が多く残されている。なぜなら、多くの点がいまだ「ブラックボックス」のままだからだ。例えば、私たちはAIモデルにハルシネーション(幻覚)が起こる傾向があることを知っているが、その理由はまだ完全には理解されていない。
大学は市場の力から離れた場所にいるため、AIが多くの人に真の恩恵をもたらす未来を描き出すこ …
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