太陽光発電の活用には、国際的連携が不可欠かもしれない。
太陽光発電がアメリカで普及したのは最近で、2016年に設置され、送電網に接続された太陽光パネルの発電総量は1万4626メガワットだと発表された。太陽光パネルの普及率は対前年比95%の増加だ。ただし、屋根に太陽光パネルを設置しようと叫ばれているにもかかわらず、アメリカの全発電量に占める太陽光エネルギーの割合はわずか約1%だ。
天然ガス発電所や石炭火力発電所が全発電量の約3分の2を占める現状を考えると、太陽光発電の普及率が大きく伸びるまでの道のりは長い。そうなると問題は、どうすれば今以上に太陽光発電の普及速度を上げられるか、になる。
スタンフォード大学が発表した新報告書によると、政策転換を示せば太陽光パネルの普及率が今以上に伸びるくらいコストを削減できる。しかし数多くの分析とは違って、今回の報告書のテーマは国による補助金等のインセンティブではない。国際舞台でアメリカがどう行動するべきか、を取り上げているのだ。
太陽電池の生産で国際市場を牛耳っている中国は、世界出荷量で70%のシェアを占めている一方、アメリカは1%だ。この現状は米国政府には受け入れがたく、外国製パネルに対する購買意欲を妨げて国産の導入を促進させようとして、現行の政策では米国に輸入される中国製太陽光パネルには関税が課されている。
ところがスタンフォード大学の報告書によると、中国企業は輸入規制を回避するため、太陽光パネルを中国国外で製造することにした。また中国は太陽光パネルの材料として使われるポリシリコン(多結晶シリコン)を米国から輸入する際、関税をかけるようになった。つまり米中が互いに輸入を規制することでコストが上がり、結果として太陽光発電の導入に悪影響が及ぼしているのだ。
この報告書に関して、ニューヨーク・タイムズ紙にコラムを執筆したスタンフォード大学法科大学院のジェフリー・ボール研究員とダン・ライシャ教授は、中国製品の輸入を阻止するのではなく「中国の得意分野を慎重に評価」し、「アメリカの比較優位な部分を生かす」べきだと提案する。つまり、製造コストを削減して太陽光パネルの導入を普及させるには、アメリカは研究分野と太陽光パネルを設置するインセンティブに投資すべきで、一方では製造に強い中国の能力を生かすべきなのだ
ボール研究員とライシャ教授の提案は、太陽光発電の利用を促進する目的には効果的なアイデアだが、残念ながらトランプ大統領には受け入れられそうにない。トランプ大統領は、製造業の雇用を米国に取り戻すことに強い意欲を示しており、中国製品に対する関税をかけるつもりでいる。スタンフォード大学の報告書に記載された分析が正しいなら、米国は太陽光発電の普及率を最大限に高めるのに苦労することになるだろう。
(関連記事:The New Solar System, The New York Times, “Solar Installations Soared in the U.S. in 2016,” “米国の製造業は絶好調だからトランプは失業者を救えない,” “中国を恐れよ 米国第一主義だけで米国は中国製造業に勝てない”)