遭難者のドローン捜索、「勘」から「AI」で早期発見へ
山岳地方などでドローンを使って遭難者を捜索する際、捜索経路はほぼ人間の直感によって計画されている。深層学習AIシステムを使うことで、一分一秒を争う状況でより多くの命を救える可能性がある。 by James O'Donnell2024.06.04
スコットランドの険しいハイランド地方で登山者が道に迷った場合、救助隊はドローンを飛ばし、植物を踏みつけた跡、衣服の落とし物、食品の包み紙など、登山者が通った経路の手がかりを探すことがある。しかし、地形は広大であり、バッテリー時間には限りがある。そのため、捜索範囲を正しく選択することが非常に重要だ。
熟練したドローン操縦者はこれまで、直感と統計的な「探索理論」(第二次世界大戦でドイツ潜水艦を探索した際の戦略)を組み合わせ、特定の場所を優先的に捜索するという方法をとってきた。グラスゴー大学のヤン・ヘンドリック・エワーズらの研究チームは最近、機械学習システムを活用することでより良い結果が得られないかを検討し始めた。
エワーズはハイランド地方でスキーや登山をして育ったため、この地方における救助活動に伴う複雑な課題を明確に理解している。「子ども時代は、屋外で過ごすかコンピューターの前に座っている以外はあまりすることがありませんでした」と、エワーズは言う。「結局、今でもそればかりをしています」。
エワーズはまず、世界中の捜索救助事例のデータセットを収集することから始めた。このデータセットには、最終的な発見場所(水辺、建物、空き地、木立、道路など)に加えて、各人の年齢、狩猟、乗馬、登山などをしていたかどうか、認知症を患っていたかといった情報に関する情報も含まれていた。エワーズはスコットランドの地理データに加え、このデータを使用して人工知能(AI)モデルを訓練した。このAIモデルは何百万回ものシミュレーションを実行し、それぞれの状況下において遭難者が通った可能性の高いルートを導き出す。その結果、優先捜索エリアを示す確率分布図(一種のヒートマップ)を生成するのだ。
この確率マップによって研究チームは、より効率的なドローン捜索経路のプランニングに深層学習手法が利用できることを証明した。5月21日にアーカイブ(arXiv)に投稿された研究(査読前論文)によれば、同チームはこの新しいアルゴリズムと従来の2つの捜索パターンを比較するテストをした。従来の捜索パ …
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