5月21日に投稿されたアニメーション動画には、深夜のテレビCMのようなナレーションがついているが、その宣伝内容はまるで遠い未来の話のようだ。タコのようなロボット外科医の腕が動き回り、瀕死の男性の頭をすばやく取り外し、若い健康な身体に移植する。
これはブレインブリッジ(BrainBridge)という、「最先端のロボット工学と人工知能(AI)を駆使して頭部と顔面の完全移植をする頭部移植マシンの世界初の画期的なコンセプト」であるとアニメーション動画は主張している。
投稿以来、動画は数百万回再生されており、フェイスブックでは2万4000件以上のコメントが寄せられ、ティックトック(TikTok)では切断された頭部がグロテスクなほど生々しく描写されているとして、警告が出ている。洗練されたデザインのブレインブリッジのWebサイトには、「神経科学チームのリーダー」や「政府広報アドバイザー」など、いくつかの求人情報が掲載されている。非常に説得力があり、ニューヨーク・ポスト(The New York Post)は、ブレインブリッジは「医用生体工学のスタートアップ」であり、「同社は」今後8年以内に手術を実施することを計画していると報じたほどだ。
しかし、ブレインブリッジは実在の会社ではなく、どこの法人でもないことが判明している。動画を制作したのは、イエメンの科学コミュニケーターで映画監督でもあるハシェム・アル・ガイリだ。アル・ガイリは2022年に人工子宮を題材にした「エクトライフ(EctoLife)」というバイラル動画を制作し、この動画も内容が本物かどうかを見極めるためにジャーナリストたちを奔走させた。
だが、ブレインブリッジは単なる挑発的な芸術作品ではない。この動画は、最近一部の延命主義者や起業家の間で注目を集めている、死の克服という非常に賛否両論がある構想を宣伝する最初の広告塔だと考えるのが妥当だろう。
「このプロジェクトへの新たな参加者を募ることが目的です」とアル・ガイリは言う。
23日の朝、ドバイに住むアル・ガイリは午前5時に起床し、ソーシャルメディア上で動画の再生回数が伸びていく様子を見ていた。「経過を観察しています」と語るアル・ガイリは、クリック数を稼ぐためにこの動画を作ったのではないと主張する。「バイラル動画を作ることが目的ではありません。バイラル動画はいつでも作れます。限界に挑戦し、実現可能性を試しているのです」。
この動画プロジェクトは、AI創薬企業インシリコ・メディシン(Insilico Medicine)の創業者であり、抗老化研究の第一人者でもあるアレックス・ザボロンコフによって一部資金提供された。同創業者が自身のリンクトイン(LinkedIn)アカウントにこの動画を投稿した後、コメント投稿者たちは、動画に映し出された2人の身体の顔が同創業者の顔であることに気づいた。
「私が設計を手伝い、いくつかのものに資金を提供したことは確かです」とザボロンコ …