KADOKAWA Technology Review
×
【冬割】 年間購読料20%オフキャンペーン実施中!
主張:地球工学実験、ふわっとした禁止議論に終止符を
Getty Images
気候変動/エネルギー 無料会員限定
Why new proposals to restrict geoengineering are misguided

主張:地球工学実験、ふわっとした禁止議論に終止符を

太陽地球工学による気候への介入について、世界中で曖昧な理由による中止や中断が続いている。しかし、コーネル大学のダニエレ・ビジョニ助教授は、より多くの情報に基づいた決断を下すためには、透明性、国際協力、市民参加を促進しながら、屋外試験を含めた研究が必要だと主張する。 by Daniele Visioni2024.05.08

気候変動の危険性が高まり、地球を冷却するテクノロジーを研究しようとする組織が増える中、気候システムの意図的に変化について検討すべきか否かをめぐる議論が加熱している。

一般に太陽地球工学(ソーラー・ジオエンジニアリング)として知られるこのような介入には、成層圏に二酸化硫黄を放出してより多くの太陽光を跳ね返したり、海岸線に塩の粒子を散布してより高密度で反射率の高い海上雲を作ったりすることが含まれる。

特に、小規模の屋外試験を通じて地球を冷却する方法の可能性の研究への関心が高まっているが、それに伴い、この研究分野を封印するか、少なくともより厳しく制限するべきだという声も上がっている。しかし、こうした規制は、地球温暖化が加速する中で人々の命を救い、苦しみを和らげる可能性のあるテクノロジーに対する科学的探求の中断や、妨げになるだろう。また、その定義や実施も、規制を支持する人々が考えるよりはるかに難しいかもしれない。

4月初め、テネシー州知事はある法案に署名した。「気温、天候、太陽光の強さに影響を与えるという明確な目的」のために化学物質を大気中へ「意図的な注入、放出、拡散」することを禁止する法案だ。この法律は、ケムトレイル(飛行機雲を有害化学物質や兵器だという陰謀論)に関する陰謀論が覆されたことが主な動機となっているようだ。

一方、3月に開催された国連環境計画の会議では、アフリカ諸国からなるブロックが、屋外試験を含むすべての太陽地球工学活動を禁止しないまでも一時停止を課す決議を求めた。メキシコ政府もまた、国内での実験に対する規制を提案している。

立場を明確にしておくが、私は利害関係のない第三者ではなく、太陽地球工学に焦点を当て、この問題に関する国際的なモデリング研究をコーディネートしている気候研究者である。昨年、私が共同で発表した書簡で述べたように、私はこれらのテクノロジーの研究をさらに進めることが重要だと考えている。それが特定の気候リスクを大幅に軽減する可能性があるからだ。

とはいえ、今日の一方的な取り組みや、より広範な社会的関与や同意なしに太陽地球工学の前進を支持するという意味ではない。しかし、太陽地球工学に関する規制案の中には、何をもって容認できない 「介入」とし、反対に、何をもって容認できる「小規模な」試験とするのかが曖昧なままになっているものがある。曖昧であることは問題であり、その潜在的な影響は、善意の規制推進者が望むよりもはるかに広範囲に及ぶ可能性がある。

テネシー州による法案の「意図的」の基準を考えてみよう。太陽地球工学に取り組む意図が重要なのは事実だが、その定義は難しい。もし、ある活動が大気に影響を与えることを認識しているだけで太陽地球工学活動と見なされるのであれば、自動車の運転さえも該当し得る。排気ガスが温暖化を招くことを認識しているはずだからだ。あるいは、もっと大規模な例を挙げれば、電力会社がこの法案に抵触するかもしれない …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【冬割】実施中! 年間購読料20%オフ!
人気の記事ランキング
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る