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本誌読者が選んだ注目技術「熱電池」、その仕組みと作り方
Rondo Energy
How to build a thermal battery

本誌読者が選んだ注目技術「熱電池」、その仕組みと作り方

エネルギーを熱として貯蔵する「熱電池」システムは、重工業の産業施設などから排出される地球温暖化ガスの削減に役立つ可能性がある。現在登場しているさまざまな種類の熱電池について詳しく見ていこう。 by Casey Crownhart2024.04.26

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

2024年版「ブレークスルー・テクノロジー10」の次点(11番目)受賞したのは?——「熱電池」だ!

MITテクノロジーレビュー(米国版)の編集部は毎年、ブレークスルー・テクノロジー10のリストに入るテクノロジーを選定している。2022年からは11番目のテクノロジーを選ぶ、読者投票の仕組みを導入した。

今年は特に魅力的なものが読者投票で選ばれたと思う。熱エネルギー貯蔵は、後で使うためのエネルギーを備蓄する便利な手段となる。安価ながらも間欠性のある再生可能エネルギーと、安定した熱供給を必要とすることが多い産業施設をつなぐうえで極めて重要だ。

熱エネルギー貯蔵技術がなぜ注目されているのか、そしてどこで使われることになるのかについては、以前の記事に書いた今回の記事では、現在登場しているさまざま種類の熱電池について見ていこう。ここには幅広い可能性の世界が広がっているからだ。 

ステップ1:エネルギー源を選ぶ

熱電池を作るうえで、重要な最初の1歩は熱源を選ぶことだ。私が出会った企業のほとんどは、ある種の「パワー・トゥ・ヒート・システム」を構築している。つまり、電気を流すと熱が発生するというものだ。多くの場合、トースターのスイッチを入れたときのようなプロセスで、抵抗体に電流を流すことで熱が発生する。

プロジェクトによっては、送電網に接続されていない風力タービンやソーラーパネルなどの電力源から直接電気を取るものもある。このような仕組みは、送電網の電気料金に組み込まれたサーチャージを支払う必要がないため、エネルギーコストを削減できる可能性がある。そう説明するのは、エネルギーと気候を専門とする政策・研究企業、エネルギー・イノベーション(Energy Innovation)の産業担当上級部長であるジェフリー・リスマンだ。

それ以外の方法としては、熱電池を送電網に直接つなぐこともできる。このようなシステムを使えば、電力価格が安いときや、再生可能エネルギーで生成した電力がたくさん送電網に流れている時に、施設に熱を備蓄できる。

熱貯蔵システムの中には、電気を使うのではなく、廃熱を利用するものもある。たとえば、ブレンミラー・エナジー(Brenmiller Energy)は、顧客のニーズに応じて熱または電気で蓄熱できる熱電池を製造している。

廃熱を利用するシステムは、熱源によっては、電気を利用するシステムほど高温にはならないかもしれない。だが、何もしないとエネルギーが無駄になってしまう施設の効率向上に役立つかもしれない。セメントや製鉄のような高温になるプロセスでは、特にその可能性が高い。

ステップ2:蓄熱材を選ぶ

次に、蓄熱材を選ぶ。これらの材料は、おそらく安価で、高温に達し、耐えられるものでなければならない。

レンガやカーボンブロックは、まとめて詰め込むことができ、素材によっては1000°Cをはるかに超える温度に達するため、人気のある選択肢だ。ロンド・エナジー(Rondo Energy,)やアントラ・エナジー(Antora Energy)、エレクトリファイド・サーマル・ソリューションズ(Electrified Thermal Solutions)は、ブロックやレンガを使って高温の熱を貯蔵している。

砕いた岩石もまた選択肢の1つで、ブレンミラー・エナジーが蓄熱材として選択している。カルデラ(Caldera)はアルミニウムと砕石の混合物を使用している。

溶融物質はポンプで移送できるので、熱エネルギーを後で供給するための選択肢がさらに増える可能性がある(ただし、その分システムが複雑になる可能性もある)。マルタ(Malta)は溶融塩を使用した熱貯蔵システムを構築中であり、フォース・パワー(Fourth Power)のような企業は溶融金属を一部に使ったシステムを使用している。

ステップ3:供給方法を選ぶ

最後に、そしておそらく最も重要なのは、蓄熱システムからエネルギーを取り出す方法を決めることだ。一般的に、同システムからエネルギーを取り出す方法には、熱をそのまま供給する方法と、熱を使って電力を生成する方法、あるいはその2つを組み合わせた方法がある。

熱を供給するのは、最も単純な選択肢だ。通常、空気または別の気体を高温の蓄熱材に吹き付け、加熱された気体を使って機器を暖めたり、蒸気を発生させたりする。

蓄熱を利用して電気を供給することに取り組んでいる企業もある。この場合、蓄熱システムは産業界だけでなく、電力貯蔵ソリューションとして送電網においても役割を果たせるようになる可能性がある。だが、欠点がひとつある。これらのシステムには一般的に効率の問題があり、取り出せるエネルギー量は貯蔵したエネルギー量よりも減ってしまう。しかし、オンデマンドで熱と電気の両方を必要とする施設など、状況によっては適している場合がある。アントラ・エナジーは熱光起電力材料を使って炭素ブロックに蓄えられた熱を電気に戻すことを目指している。

施設のニーズに応じて、熱と電気を組み合わせて供給する中間の道を提供しようと計画している企業もある。ロンド・エナジーの熱電池が供給する高圧蒸気は、暖房だけに使用することも、コージェネレーション・ユニットを使って発電に利用することもできる。

熱電池の可能性は無限大のようで、新しいアイデアを持った新しいプレーヤーが常に登場している。このホットなテクノロジーについては、今後のさらなる報道にご期待いただきたい。

MITテクノロジーレビューの関連記事

熱電池がブレークスルー・テクノロジーの11位を獲得した理由についての詳細は、先日公開した記事をお読みいただきたい

私はエネルギーを貯蔵する方法としての熱についての記事を昨年、初めて書いた。その時述べたように、最もホットな新しい気候変動対策技術はレンガだ。

企業は、熱電池の技術を高めることに一定の成果を上げている。元同僚のジューン・キムが、昨年10月にある新しい製造施設についての記事を書いた。

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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