この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。
多くの記者がそうであるように、私も思いつく限りのソーシャルメディア・プラットフォームにアカウントを持っている。しかし、メタが昨年リリースしたX(旧ツイッター)のライバルであるスレッズ(Threads)は長らく使っていなかった。インスタグラムのアカウントと紐づけなければならないのが気に入らなかったし、人気が衰えるにつれ使う必要はないと感じていたのだ。
だが、3月末、このアプリが台湾ユーザーの間で予想外に爆発的な人気を得ていることを知り、私はようやくスレッズのアカウントを作った。数カ月にわたって、スレッズは台湾で最もダウンロードされたアプリになっており、政治やその他の話題について話すためにユーザーが集まってきているのだ。私は学術関係者や台湾のスレッズ・ユーザーに話を聞き、メタが運営するこのプラットフォームが今年台湾で再び人気を得ている理由について調べた。私が発見したことについては、こちらの記事をお読みいただきたい。
最初にこのトレンドに気づいたのは、インスタグラムだった。インスタグラムは時折、いくつかのスレッズのトレンド投稿を表示し、スレッズに誘導している。何度か見ているうちに、あるパターンがあることに気づいた。そのほとんどが、台湾の人が台湾について語ったものだったのだ。
中国出身で、主に中国について書いている私にとって、珍しい経験だった。ソーシャルメディアのアルゴリズムは、常に私と似たようなアカウントを表示してくる。中国本土、香港、台湾の人々はみな中国語で文章を書くが、使う文字も選ぶ表現もかなり異なっているので、出身地を特定するのは簡単だ。そして、真にグローバルなほとんどのプラットフォームでは、中国語での会話はほとんどは中国本土の人かその出身者によって占められている。中国本土の人口が(中国語を使う)他の地域の出身者を圧倒的に上回っているからだ。
この現象を掘り下げていくと、スレッズの人気が台湾で他に類を見ないペースで急上昇していることがすぐに判明した。インスタグラムのアダム・モッセーリ責任者は、スレッズが「あらゆる地域の中で台湾は群を抜いて好調」だと公に認めている。マーケット情報企業のセンサー・タワー(Sensor Tower)のデータによると、スレッズは2024年のほぼ毎日、台湾のアイフォーン(iPhone)とアンドロイド(Android)で最もダウンロードされたソーシャルネットワーク・アプリとなっている。スレッズ上でも、K-POPグループのような人気アカウントの下にあるコメントのほとんどが同じ台湾のユーザーから寄せられているのを見て、台湾のユーザーは遅まきながら自分たちの影響力に気づき始めている。
しかし、なぜスレッズは、他の多くの地域では失敗したのに、台湾で成功したのだろうか。ユーザーや研究者へのインタビューで、いくつかの理由が浮かび上がってきた。
まず、台湾の人々はツイッターをほとんど使ってこなかったということだ。ネバダ大学ラスベガス校のオースティン・ワン教授(政治学)は、現在Xと呼ばれているプラットフォームを定期的に利用しているのは、台湾人の1〜5%に過ぎないと推定している。主流派はフェイスブックやインスタグラムを使っているが、短いテキストを投稿するプラットフォームが待望されていた。スレッズの世界的なローンチは、これらのユーザーにツイッター風のサービスを試す良い理由を与えた。
しかし、それ以上に重要なのは、今年初めに台湾で総統選挙が実施されたことで、話し合いや議論、共感することがたくさんあったということだ。11月から、台湾の民主進歩党(民進党)支持者の多くが「スレッズに集まり、動員ツールとして利用しました」とワン教授は言う。「(総統に選出された)民進党の頼清徳候補でさえ、インスタグラムやフェイスブックよりもスレッズで多くの反応を得ていました」。
メタがスレッズをXの政治色を弱めたバージョンと位置付けようとしても、台湾での成功を実際に支えたのは、やはり政治について語りたいという普遍的な欲求であることが分かる。
「台湾の人々がスレッズに集まるのは、(ここでは)政治について話す自由があるからです」と台北のデザイナーで、選挙が理由で1月に(スレッズに)参加したリウは言う。「スレッズが脱政治化するなら、それは自らの首を絞めることになるでしょう」。
スレッズには非常に多くの台湾人ユーザーがいるため、台湾の国内政治について話すのに適した場所になっているとリウは言う。外部から簡単に影響を受けたり、乗っ取られたりすることがないのも理由だ。フェイスブックやXのようなより確立されたプラットフォームでは、ボットや偽情報キャンペーン、物議を醸すコンテンツ・モデレーション・ポリシーが蔓延している。スレッズでは、台湾ユーザーの発言に対する干渉は最小限に抑えられている。そのことが、リウにとっては新鮮に感じられるのだ。
しかし、台湾でのスレッズ人気は簡単に失敗する気がしてならない。政治的なコンテンツからスレッズを遠ざけるというメタの決定は、台湾ユーザーの体験を台無しにする一因となりえるだろう。もしスレッズが世界の他の地域で実際により成功し、人気を得ることに成功した場合、台湾人以外のユーザーが流入することで、激しい意見の対立や他のプラットフォームが堕落したあらゆる他の原因が持ち込まれる可能性もある。
これらはメタにとって答えを出しづらい難しい課題だ。スレッズがしっくりこなくなれば、ユーザーはすぐに次の流行の実験的なプラットフォームに流れてしまうからだ。これまでの台湾での成功は、メタにとっては稀有な勝利だが、この成功を維持し、他の場所でも再現するには、もっと多くの努力が必要だろう。
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「三体」映像化めぐるミステリー
ネットフリックスが3月にリリースした『三体(The Three Body Problem)』は、中国の作家リウ・ツーシンの世界的にヒットしたSF小説を映画化したものだ。しかし、欧米の視聴者はこの映画化の裏にある、映画のような現実のドラマについても知ることになる。2021年、中国メディア「財新」は、この本の映画化権を購入した成功した実業家リン・チーの謎の死を最初に調査した。2017年、リンは法務と政府関係を担当させるため、著名な弁護士であるシュー・ヤオを雇った。
2020年12月、リンは謎の混合毒素によって中毒死した。財新によると、シューはテレビシリーズのサスペンス『ブレイキング・バッド(Breaking Bad)』のファンで、上海に毒物を製造する自分の工場を持っていた。シューはダークWebを通じて何百種類もの毒物を注文し、混ぜ合わせ、ペットを使って実験していた。リンが亡くなる1週間前、シューは毒薬の錠剤をプレバイオティクス(成分のサプリメント)だと偽ってリンに渡した。
シューはリンの死後すぐに逮捕され、今年3月22日に死刑判決を受けた。