米上場企業の気候リスク開示規則、ロビー活動で骨抜きに
米国の上場企業を対象とした気候変動リスクの開示義務化は、企業側の強力なロビー活動によって当初案から大幅に後退してしまった。排出量の一部開示のみで、データの質にも疑問が残る。 by Dara O'Rourke2024.04.08
米国証券取引委員会(SEC)は米国時間3月6日、ほとんどの米国上場企業に対して温室効果ガス排出量と事業運営に関わる気候変動リスクの開示を義務付ける待望の気候関連開示規則を制定した(日本版注:ロイター通信によると、4月4日、SECは司法判断が出るまで規則の施行を停止すると発表)。
残念なことに、ビジネス利害関係者の激しいロビー活動を受けて、SECは規制内容の緩和を余儀なくされた。結果として、規制の有効性は損われ、米国は温暖化によって高まる危険性を企業に認識させる最大のチャンスを逃すことになった。
今回の新規制制定の背景には、企業にとって気候変動リスクは財務リスクであるという認識の広まりがある。グローバル企業は現在、気候変動に関連したサプライチェーンの混乱に直面している。企業の有形資産は暴風雨に脆弱であり、従業員は猛暑にさらされ、顧客の一部は移転を余儀なくされる可能性もある。企業の財務諸表には、今後売却できないかもしれない化石燃料資産が並んでおり、地球環境の急速な変化の影響を受けてビジネスモデルが問われることになる。
これは石炭会社や石油会社に限った話ではない。電力会社、運輸会社、材料メーカー、消費財メーカー、さらには食品会社にも当てはまる話だ。そして、投資家は知らず知らずのうちにこうした化石燃料関連株を購入し、保有しているのだ。私もあなたも、あなたの叔母の年金も関係している。
投資家、政策立案者、そして一般市民は皆、企業がどのように気候変動を加速させているのか、その影響に対処するために何をしているのか、そして、連鎖的な影響が企業の収益にどのような影響を与え得るのかについて、より明確で詳細な情報を必要としている。
SECの新規則は、これまで基本的に企業の自主的なシステムであったカーボン・ガバナンスを正式に義務化するもので、気候変動関連リスクがビジネスに与える影響の報告を企業に義務付ける。
企業はまた、自社が所有または管理する温室効果ガス排出源からの「直接排出量」と、「購入エネルギー」の生成時に生じる間接排出量も開示する義務がある。後者は一般的に、電気や熱の使用を意味する。
ただし、ここで重要なのは、情報を開示しなければならないのは、企業がその情報が財務的に「重要」であると判断した場合に限られている点である。すなわち、詳細情報を提供するか否かに関しては、企業にかなりの自由裁量権が与えられることになる。
SEC規則の原案では、企業はバリュー・チェーンにおける「上流および下流の活動」からの排出量を報告することも求められていた。これは一般 …
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