米国のほとんどのスマホユーザーは、ここ数日で、街中にズバットやポッポ、ビードル、コラッタの数が増えた気がしている。
漫画ぽい絵柄のコウモリ、ハト、毛虫、ネズミのような外見のモンスターは、ポケモンのキャラクターであり、任天堂の拡張現実型の無料ゲーム『Pokémon Go』に登場する。街中にいるポケモンをスマホで探し出し、赤と白の仮想「ポケボール」を投げて捕まえるゲームだ。「ジム」に設定された場所では、ポケモン同士を対戦させて遊べる。
『Pokémon Go』は先週、iPhoneやAndroid用に数カ国(今のところアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド)限定で発売され、すでに大人気になっている。11日の時点で、iOSでもAndroidでも一番人気の無料アプリになり、売り上げランキングでもトップになっている。Androidユーザーだけで500万~1000万人がダウンロードしたのだ。
一見、ゲームは難しくなさそうだし、見た目も特別魅力的とはいえない。プレイヤーは初めにアバターを選び、カスタマイズする。ユーザーが現実世界を歩き回ると、スマホのGPS機能により、アバターも仮想世界を移動する。そこは現実世界の景色とつながった仮想空間で、ポケボールなどのアイテムを収集できる。ポケモンに遭遇すると、背後のカメラで撮影した光景とポケモンが画面内で合成され、まるで目の前にポケモンがいるかのように表示される。
『Pokémon Go』の人気がなぜこれほど急上昇したのだろうか? 拡張現実のアプリやゲームに新規性はなく、開発元のナイアンティックは、株式会社ポケモンや任天堂(ナイアンティックとポケモンの両社に出資している)との提携前、グーグル傘下の2012年に都市探検型のゲームアプリ『Field Trip』、2013年にSFゲーム『Ingress』をリリースしている。
だが、他の条件はその後大きく変化した。スマホ所有者は発展途上国でも急激に増加し、消費者は拡張現実や実質現実に慣れてきたからだ。
拡張現実型ゲームは、以前であれば相当な人数のユーザーを引き付けられた(昨年8月Googleからの独立を発表した際のNianticのデータによれば、「Ingress」のダウンロードは1200万回以上)。『Pokémon Go』は拡張現実型ゲームに慣れ、ゲームを試してみたいユーザーが多くいる状況で、競争に参加した。大人気の理由は、1990年代に登場したポケモンのキャラクターを、多くの潜在ユーザーが知っていたことも関係しているだろう。
他にも重要な要素がある。『Pokémon Go』は、最高に素晴らしい出来のゲームには見えないが、操作が簡単で、すぐになじめるのだ。妊娠9カ月の私も、サンフランシスコの街中を何時間もぶらぶらし、いろいろな場所に寄ってポケボールを回収し、出会ったポケモンに投げるのは楽しい体験だった。
1匹目のポケモンは、寝室のベッドの下で遭遇した。駅や野球場、そして仕事場からの帰り道でも何匹か(実際には100匹以上が存在している)を捕まえた。仕事場のデスクでも、6匹くらいを見つけた。成長が止まったのイモ虫のような「キャタピー」は、MIT Technology Reviewのバックナンバーの上にちょこんと座っていた。
数時間のプレイ後、レベル5まで上がり、地元の「ポケモンジム」に入る資格をゲット。3匹からなるポケモンチームに入り(私は「Team Valor」に参加)、他のモンスターと対戦できるようになった。初戦は、サンフランシスコのソーマ地区の元酒屋に設けられたジムで開催されたが、うまくいかず、すぐに負けてしまった。そこで、さらに時間をかけて別のポケモンを仲間に入れた方がいいと気付いた。
多くの新アプリと同様、『Pokémon Go』にも、ユーザーをつなぎ止めるための改善点がたくさんある。私がプレイしているときは、落ちたり固まったりすることが数回があった。電池も食う。画面がほとんどオンの状態で30分プレイしただけで、iPhoneバッテリーの4分の1ほどを消費してしまった。電池が足りなくなったとき「バッテリー節約オプション」が設定できることに気付いた。これは役に立つだろう。
また、アプリ使用時の安全についても心配がある。拡張現実やマップ状の画面構成のため、常に下を向いていなくてはならない。仕事場の周辺を歩いた時は、時折(特に通りを渡る際に)顔を上げるように常に自分に言い聞かせていた。
そういう面倒な点や現実世界での危険を除けば『Pokémon Go』は順調なスタートを切ったといえるだろう。ゲームは楽しいし、スマホの小さな画面でも拡張現実が魅力的であることがわかる。ARをスマートに活用したゲームやアプリの開発が触発されるかもしれない。リアルとデジタルの世界を、コンパクトな画面やヘッドセットを使って融合させることに興味を掻き立てられた。