KADOKAWA Technology Review
×
電動自転車で火災多発の
ニューヨーク市、
バッテリー交換所展開へ
Stephanie Arnett/MITTR | Envato
気候変動/エネルギー Insider Online限定
New York City’s plan to stop e-bike battery fires

電動自転車で火災多発の
ニューヨーク市、
バッテリー交換所展開へ

多発する電動自転車のバッテリー火災を防ぐため、ニューヨーク市はスタートアップと協力してバッテリー交換ステーションを市内に試験展開する。電動自転車を多く利用する配達員の安全を確保することが狙いだ。 by Casey Crownhart2024.03.25

ニューヨーク市内を数ブロックも歩くと、電動自転車がすいすい走るのを一度は目にするはずだ。

電動自転車の人気は近年、ますます高まっている。とりわけ配達ドライバーの間で広まり、大勢が電動自転車でニューヨークの市街地を縫うように走り回る。だが、電動自転車の急増に伴ってバッテリーの発火が相次ぎ、火災による死亡事故にもつながる事態になっている。

そこでニューヨーク市は、バッテリー交換によって火災を防ごうとしている。市が準備中のパイロット・プログラムでは、少数の配達ドライバーを対象に、必要に応じてフル充電のバッテリーと空のバッテリーを交換できるステーションなど、電動自転車向けの充電方法を提供する。

プログラムの推進者らは、この取り組みによって市内に小型電動移動手段の新たな充電方法の基盤を築けるとしている。利便性が向上し、発火のリスクも減らせるという。とはいえ、電動自転車に限らず日常生活に組み込まれているバッテリーの数の多さを考えると、火災安全の達成は長く険しい道のりになるはずだ。

交換ソリューション

ニューヨーク市の報告によると、市内におけるバッテリーが原因の火災の発生件数は、2019年から2023年の間に9倍近く増加した。火災に対する懸念が高まる一方であるのを受け、2023年3月にエリック・アダムス市長は対策を発表した。内容は、電動自転車と自転車用バッテリーに関する規制、安全を確保できない充電方法の取り締まり、配達ドライバーに対する働きかけなどである。

バッテリーが発火する原因はさまざまだが、電動自転車の利用者が集合住宅内でバッテリーを充電したことで起こることが多いようだ。2月に発生した火災では1人が死亡、22人が負傷している。

ニューヨーク市が最近始めた充電方法対策の取り組みが、電動自転車を使用する配達ドライバーを対象としたパイロット・プログラムである。100人のドライバーにモニターとなってもらい、6カ月間、スタートアップ企業3社の提供する充電ソリューションのいずれかを利用してもらう。集合住宅のコンセントを利用する必要はなくなる。

参加するスタートアップ企業の1つ、スウィフトマイル(Swiftmile)は、電動自転車のバッテリーを2時間以内に充電できる自転車ラックのような形態の急速充電ステーションを構築している。残る2社のポップホイールズ(Popwheels)とスウォビー(Swobbee)は、より高速なソリューションとして、バッテリー交換を提案している。利用者は、バッテリーを差し込んで充電が完了するのを待つ代わりに、空になったバッテリーをフル充電のバッテリーと交換できる。

バッテリー交換は、アジアを中心に一部の電動移動手段ですでに利用されている。中国の自動車メーカーのニオ(Nio)は、3分足らずでフル充電のバッテリーを自動車に取り付けられるバッテリー交換ステーションのネットワークを展開している。MIT テクノロジーレビューが選んだ「気候テック企業 2023」の1社であるゴゴロ(Gogoro)は、1日あたり40万回以上の交換に対応できる電動スクーター用バッテリー交換ステ …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Google DeepMind is making its AI text watermark open source AI生成テキストを見抜く「電子透かし」、グーグルが無償公開
  2. The race to find new materials with AI needs more data. Meta is giving massive amounts away for free. メタ、材料科学向けの最大規模のデータセットとAIモデルを無償公開
  3. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る