315kmごとに重大事故を起こし得る自動運転の「成熟度」
315kmごとに重大事故を起こす可能性があるウーバーの自動運転は「成熟」したとはいえない。しかしカリフォルニア州は遠隔監視による無人運転の試験走行を年内にも解禁する方針だ。 by Jamie Condliffe2017.03.20
運転方法を訓練中の自律自動車には、「補助輪」役の人間が運転席に座わっている。だが、ロボット自動車から「補助輪」を外せば、重さ2トンの金属の塊は自転車のように倒れて立ち往生する代わりに、どこに進んでしまうかわからない。
カリフォルニア州車両管理局は先週、自律自動車の開発企業によるドライバーが同乗しない状態での走行試験を、州内の道路で年内に解禁すると発表した。別の場所で車両を監視する担当者が必要だが、ガーディアン紙が書いているとおり、今回のニュースは自律自動車テクノロジーの画期的瞬間といえる。だが、自律自動車のテクノロジーは、誰もがロボット自動車を信頼しているといえるほどの域に達しているのだろうか。
目的地に到着するまでハンドルに触れずに済むのは確かに魅力的だ。ウェイモ(Waymo)やテスラ、ウーバー等の企業が、できるだけ早く自律自動車を開発しようと躍起になるのもうなずける。だが、どんなにイノベーションを激しく競い合っていたとしても、複雑な道路状況の多くで、自律自動車はいまだに適切に対応できないことは明白だ。
MIT Technology Reviewのウィル・ナイト記者がウーバー初の自律自動車の乗車時、自律システムに対応できない状況があったのは確実だ。ナイト記者は「難易度の高いさまざまな状況に遭遇したが、機械の運転はたとえば、路上に飛び出す歩行者にも対応するなど、見事だった。ただし、運転席にいる係員が制御する場面も何度かあった。トラックの後ろに付くように止めたり、別の自動車の急転回を避けるために介入したりしたのだ」と当時の記事で述べている。
ナイト記者の記事(英語版は2016年9月14日公開)から6カ月後の今、状況は変わっていない。Recodeが入手したウーバーの内部資料によれば、ウーバーの自律自動車では、同乗するドライバーの役割がまだ大きいことを示しているように見える。たとえば、ちょうど先週、ウーバーの43台の自律自動車の走行距離が合計約3万2757kmに達したが、平均約1.3kmごとに安全上同乗したドライバーが介入する状況が発生した(ただし現状、平均値は1月以降減少している)。
約1.3kmごとに人間が介入するとはひどい話だ。ただし、この値は、ドライバーが自動車から操作を取り戻した全ての場合(大雨が降り始めた、路面標識が途切れていた等の日常的な理由)を含んでいる。本当に重要なのは、ウーバーが「重大」(ドライバーが介入しなかった場合に1人以上の死傷者が出るか、5000ドル以上の損失が発生する状況)に分類したドライバーによる介入が起きるまでの距離のほうだ。先々週、平均事故間隔は約315km(東名高速道路で、東京ICから名古屋ICの距離に相当)で、1月よりは約80km改善しているとはいえ、今なお問題のある状態だ。
したがって、カリフォルニア州の道路でウーバーの自動運転車がドライバーなしで走行できる準備が整っているとはとてもいえない。昨年発生した自動運転中のテスラ車による死亡衝突事故が示すとおり、テスラ車も準備万端とはいえない。ハンドルを握らずに済む未来は確かに訪れるだろう。だが、安全のため、我慢してもいいはずだ。
(関連記事:Recode, Guardian, “交通事故削減の責任は 自動車メーカーにあるのか?,” 試験中の自動運転タクシーはしばらく試験中のままな理由,” “ウーバーの無人タクシー実験 試乗レポート”)
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- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。