低コストで即効性あり、飛行機のルート見直しが温暖化対策になる理由
最近の研究で、ルートの変更は比較的手頃なコストで行える可能性があることが明らかになった。 by James Temple2024.04.18
いくつかの研究は、航空機のごく一部の飛行ルートを微調整することで、地球温暖化を有意に抑制できる可能性があるとの結論を出している。そして最近発表された新しい論文では、これらの変更がかなり低コストで実現できる可能性があることが示された。
航空会社に共通する気候に関する懸念は、航空機が燃料を燃焼する際に大量の二酸化炭素を排出することだ。またジェット機は熱、水蒸気、粒子状物質も放出するため、大気の特に気温が低く湿度が高い冷え切った部分では「飛行機雲」として知られる薄い雲が発生することがある。
多数の飛行機がそのような部分を通過すると、これらの結露の跡が巻雲を形成し、地表から逃げる放射線を吸収して、地球上に浮かぶ毛布のように働くことがある。
この巻雲形成現象は、航空業界が気候変動に寄与する割合の約35%、または地球温暖化全体の約1%~2%を占める可能性があるとの推定もある。
そして飛行機雲の約80%を作り出しているのは、航空業界のフライト全体の2%~10%というごく一部なのだ。そのため、これらの飛行ルートを変更するだけで影響を大幅に軽減でき、低コストで迅速に温暖化を緩和する有望な方法になる可能性が高まっている。
昨年の夏、ブレークスルー・エナジー(Breakthrough Energy)、グーグル・リサーチ、アメリカン航空は、ニューヨーク・タイムズで最初に報道されたように、共同研究によるいくつかの有望な結果を発表した 。この研究チームは、衛星画像、気象データ、ソフトウェアモデル、AI予測ツールを利用して、航空機が飛行機雲を発生させる可能性が高い部分の上空または下空にパイロットを誘導した。アメリカン航空は、6か月間で70回のテスト飛行でこれらのツールを使用した。そしてその後の衛星データによると、ルートを変更しなかったフライトと比較し、飛行機雲の全長が54%短縮されたことが示されたのだ。
もちろん、このような戦略を実行するにはコストがかかる。一般に、これらの空域を避けるにはより多くの燃料が必要であり、これはまた、飛行によってより多くの温室効果ガスが排出されてしまうことを意味している(この問題については後ほど詳しく説明しよう)。
燃料の増加は経費の増加を意味し、そして比較的手頃な価格でなければ、航空会社が自発的にそのような措置を講じる可能性は低い。
学術誌の「Environmental Research: Infrastructure and Sustainability」に掲載された最近の研究では、飛行軌道を最適化するための商用ツールと、昨年の夏と今年の冬の様々な気象条件下での …
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