クリストファー・ノーラン監督の映画『インセプション』では、レオナルド・ディカプリオ演じるキャラクターがテクノロジーを利用してターゲットの夢に入り込み、情報を盗み出して、潜在意識に虚偽の情報を挿入するというシーンがある。
実質現実(VR)における新しい「インセプション攻撃」も、同じように機能する。シカゴ大学の研究チームは、メタの 「クエスト(Quest )」VRシステムのセキュリティ脆弱性を悪用して、ユーザーのヘッドセットを乗っ取り、機密情報を盗み、生成AIの助けを借りてソーシャル・インタラクションを操作することに成功した。
この攻撃はまだ実際には使用されていない。ハッカーがVRヘッドセットのユーザーのWi-Fiネットワークにアクセスする必要があるため、実行のハードルが高いのだ。ただし、この攻撃は非常に洗練されており、ターゲットとなったユーザーはフィッシング、詐欺、グルーミングなどのリスクに対して非常に脆弱になってしまう。
この攻撃でハッカーは 、クエストVRシステムに悪意のあるコードを注入するアプリを用いて、VRシステムのホーム画面とユーザーの元の画面と同じに見えるアプリのクローンを起動する。侵入に成功すると、ハッカーはその人がヘッドセットを使用して実行するすべてのことを確認、記録、変更できてしまう。これには音声、ジェスチャー、キーストローク、ブラウジング・アクティビティ、さらにはユーザーのソーシャル・インタラクションの追跡も含まれる。さらにハッカーは、ユーザーが他の人に送るメッセージの内容を変更することさえできる。この研究は、MITテクノロジーレビューに独占的に共有されたもので、まだ査読は受けていない。
メタの広報担当者は、この研究結果について検討する予定であると述べ、「当社はバグ報奨金プログラムやその他の取り組みの一環として、常に学術研究者と協力しています」と述べた。
VRヘッドセットは近年徐々に人気が高まっている。しかし、製品自体の開発に比べてセキュリティ研究が遅れており、VRにおけるハッカーからの攻撃に対する現在の防御策は不足している。さらに、VR体験の没入感の高い性質が、ユーザーが罠にはまったことを気づきにくくしている。
「今回のことで衝撃を受けたのは、今日のVRシステムがいかに脆いものかということです」。研究チームを指揮したシカゴ大学のヘザー・ジェ …