IBMとグーグルは、数年以内(グーグルは5年と明確に)に量子コンピューターを事業化する(クラウドサービスの目玉メニューとして提供されるだろう)つもりだと3月に発表した。競合する二社は、非常に強力なコンピューターにより、物流や地図作成企業に効率的な経路計画を提示したり、新形態の機械学習や顧客への商品の推薦、診断検査が向上したり、といった利益をもたらす新時代を見据えている。
しかし、この種の分野で導入が始まる前に、初期の量子コンピューターが現実世界で収益をあげるとすれば、恐らく、バッテリーや電子工学分野の効率改善に量子コンピューティングを活用したい化学分野になるだろう。すでに量子コンピューターに初期から関わっている少数の研究者は、分子や化学反応のシミュレーションに最適だと考え、もっとも詳細に用途を描き出している。
量子コンピューター(極小世界で発生する量子力学的効果でデータを記述する)は、あらゆる従来型コンピューターでは不可能な計算を処理できるはずだ。量子コンピューターの構築に使える可能性のある最近のハードウェアの進歩により、マイクロソフトやインテル、グーグルやIBMなどの企業が、相次いで投資するようになった(「2017年版ブレークスルー・テクノロジー10:実用的な量子コンピューティング」参照)。
「理論的に証明されているかで見れば、化学が最初です」とIBMのスコット・クラウダー最高技術責任者(CTO)はいう。クラウダーCTOの部門は現在、スーパー・コンピューター等の製品を販売しており、クラウド型量子コンピューターのサービスを今後数年以内に製品ラインナップに加える意向だ。「小規模の量子コンピューターで有望なのは化学分野です」
研究者は長年、分子と化学反応のシミュレーションにより、新しい材料や医薬品、工業用の触媒といった製品の研究を進めてきた。シミュレーションにより、実際の実験にかかる時間や科学的な行き詰まりに至る研究の数を減らせるため、シミュレーションは、世界のスーパー・コンピューターの処理負荷のかなりの部分を占めている。
ただし、ハー …