知性を宿す機械は人間の背中を追いかけている。深層学習機械は、顔認識やビデオゲーム、さらには古代中国を起源とする囲碁等のタスクなら、すでに人間の能力を超えている。そのため、人間はすでに機械に追い抜かれてしまったと考えても無理はない。
だが、進歩はそれほど早くない。知性を宿す機械がいまだに人間に後れを取っている重大な分野がある。学習速度だ。たとえば、古典的なビデオゲームの習得で、人間ならわずか2時間でできるようになることが、最高の深層学習機械でさえ同じ技能レベルに達するまでに約200時間かかる。
そこでコンピューター科学者は、機械の学習速度を上げる方法を何としても見つけたがっている。
3月16日、グーグルの子会社がディープマインド(ロンドン)のアレキサンダー・プリッツェル研究員のチームが、まさにその方法を見つけたと発表した。研究チームが開発した深層学習機械は、急速に新しい経験を取り込み、経験に基づいて行動できる。結果としてこの機械は他の機械よりかなり速く学習でき、そう遠くない将来、人間に匹敵するだけの可能性を秘めている。
まず、背景について簡単に説明しておこう。深層学習はニューラル・ネットワークの複数の層を使ってデータ内のパターンを探す。ひとつの層がある認識のパターンを見つけると、その情報を次の層に送る。さらにその層がその信号内のパターンを探して、といった具合に学習するのだ。
たとえば顔認識では、最初の層がある画像内の境界(エッジ)を探し、次の層は境界の円形のパターン(たとえば目や口によってできる円)を探し、その次の層は三角形のパターン(たとえば2つの目と1つの口によってできる三角形)を探す。すべてのパターンがあると、最終的に、顔が見分けられた、と出力されるのだ。
もちろん、悪魔は細部に宿っている。さまざまなフィードバック・システムがあり、層間のつながりの強さなど、さまざまな内部パラメーター …