ウルグアイの首都モンテビデオで迎えた暖かく晴れた日。空気はきれいでさわやかだ。厳重なセキュリティで固めた国立農業研究所(INIA)の施設内には、高性能の遺伝子銃や巨大な顕微鏡があり、遺伝子編集された何万匹ものハエが飛んでいる。ハエたちの鮮やかな青色の羽は、ネットが張られた小さな白いケージの壁をパタパタと叩いている。
INIAのアレホ・メンチャカ獣医が見せてくれたビデオに映っていたハエたちは、ラセンウジバエに対して、間もなく解き放たれるであろう新兵器である。ラセンウジバエは南米とカリブ海地域に広く見られる寄生虫で、牛を殺し、畜産業に毎年数百万ドルにのぼる損害をもたらしている。
メスのラセンウジバエは牛に卵を産みつける。卵から孵ったミミズのような幼虫は宿主動物の中にねじのように入り込むが、その途中で肉を食べ、皮膚を傷つける。治療しなければ、動物は耐え難い苦痛にもだえながら最後には死んでしまう。
しかし、メンチャカ獣医たちには計画がある。彼らはゲノム編集システムのCRISPR(クリスパー)を使用して、遺伝子ドライブと呼ばれる方法を開発した。遺伝子ドライブは、通常の遺伝子よりも広く速く拡大するように生殖プロセスを操作したある種の遺伝要素である。この遺伝子ツールを使ってラセンウジバエの個体数を激減させることを最終目標に、メンチャカ獣医たちは研究室のケージ内でのテストで次の段階に進もうとしている。モンテビデオのパスツール研究所との共同研究で、米州開発銀行(IDB)から45万ドルの助成金を受けている。
「遺伝子ドライブを使えば、正確かつ効果的にこの害虫を抑えられます」とメンチャカ獣医は言う。
遺伝子ドライブは自然界でも起こる現象だが、これを意図的に起こすテクノロジーはまだ新しく、賛否両論がある。CRISPRによって、科学者はあらゆる生命体のDNAの特定の遺伝子を切断し、配列を置き換えられるようになった。CRISPRを使うと、動物のDNAを細かく調整して種の生存を左右することができる。具体的には、特定の遺伝子を持つ個体を繁殖させることで、メスの不妊化を進めるのだ。
蚊を根絶するための遺伝子ドライブの開発に取り組んでいる組織もある。シアトルに拠点を置くビル&メリンダ・ゲイツ財団が支援する「ターゲット・マラリア」は、現在世界で最も先進的な遺伝子ドライブ・プロジェクトである。しかしこれらの試みでも、ケージ内でのテストより先の段階に進んだものはない。遺伝子改変動物を野外に放つ承認を得るプロセスは遅々として進んでいない。
2020年、INIAの研究者たちはウルグアイ政府から許可を得て、同国がそれまで進めてきた「ラセンウジバエ防除国家プログラム」の一環としてINIAの技術をテストできることになった。現在はラボ内で、遺伝子編集したラセンウジバエを使って、遺伝子ドライブを構成するさまざまな要素を調べる実験が進められている。計画ではまず、メスの受胎能力に不可欠な遺伝子 …