1月下旬、バイデン政権は液化天然ガス(LNG)燃料の経済、環境、気候への影響を再評価するため、輸出許可申請を一時停止すると発表した。
LNGは天然ガスを冷却して液体の状態で生産されるため、保管や海外市場への輸送が容易になる。天然ガス自体は、何十年にもわたってクリーンエネルギー議論の中核だが、物議も醸している。天然ガスが燃焼すると、石炭の約半分の温室効果ガスが排出されるからだ。天然ガスの使用は、米国を含む一部の国で電力部門による排出量の削減に役立っている。しかし、天然ガスは主に強力な温室効果ガスであるメタンでできている。生産から輸送に至るサプライチェーンに沿ったメタン漏洩は、よりクリーンに燃焼する燃料としての天然ガスの利点を損なってしまう恐れがある。
今回の政府の決定に対する、即時的な反応は予測どおりだった。一部の環境団体は、この発表を待望の軌道修正であると歓迎し、米国が地球規模の気候変動に関する公約を達成するのに役立つ可能性があると主張した。しかし、業界団体は攻撃した。この決定は温室効果ガス排出削減にとって逆効果となる施策であり、地政学的な不安定性が高まる中で、国家のエネルギー安全保障を損なうと主張している。
正しいのはどちらだろうか? 分かっているのは、我々は間違った質問をしているということだ。
重要なのは、最大の輸出国である米国から出港する貨物船に満載されたLNGの温室効果ガス排出量の絶対値ではない。むしろ、輸出された天然ガスが気候にどのような影響を与えるかは、輸入国で天然ガスが何と置き換わるか、そして現実的に、石油や石炭に代わる代替燃料としてLNGが発生する温室効果ガスの量が多いか少ないかによって決まるのだ。
考えてみてほしい。ロシアがウクライナに仕掛けた戦争により、米国の欧州へのLNGの輸出が劇的に増加した。そのガスは、主に電力部門で照明と暖房を維持するために使用されている。ロシアの侵攻がなかったとする並行する世界で可能性の高いシナリオは、欧州がロシアからガスを購入し続けるというものだろう。しかし、エビデンスが示しているように、米国の天然ガスのサプライチェーンと比較して、ロシアの天然ガスのそれはメタン排出量が多い。主な理由は、ロシアの天然ガス・インフラは特に漏出が多く、強力な温室効果ガスが大量に大気中に漏れてしまうからだ。その関係で、パイプ輸送されるロシア産ガスが米国産のLNGに置き換わることで、海を越える燃料輸送による追加排出量を含めても、全体的な炭素排出量が削減される可能性がある。
…