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ディープマインドの新AI、数学オリンピック級の幾何学問題を解く
Sarah Rogers/MITTR | Getty
Google DeepMind’s new AI system can solve complex geometry problems

ディープマインドの新AI、数学オリンピック級の幾何学問題を解く

ディープマインドは高校生の国際数学オリンピックレベルの幾何学の問題を解くAIを開発した。言語モデルと記号推論を組み合わせることで、より人間に近い推論ができるという。 by June Kim2024.01.19

グーグル・ディープマインド(Google DeepMind)は、複雑な幾何学問題を解くことができる人工知能(AI)システムを開発した。専門家によると、これは「より人間に近い推論能力を持つ機械への大きな一歩」だという。

AI研究者にとっては、幾何学、そしてより広範な数学は以前からの課題だった。2024年1月17日付けでにネイチャー(Nature)に掲載されたこの研究論文の共著者であるタン・ワンは、「テキストベースのAIモデルに比べ、数学は記号を主体とする特異領域であるため、訓練用データが著しく不足しています」と言う。

数学の問題を解くには論理的推論が必要だが、これは現在のAIモデルの大半が苦手としている分野だ。「数学がAI知能の進歩を測る重要なベンチマークとなり得るのは、推論を必要とするからです」と、ワンは言う。

「アルファジオメトリー(AlphaGeometry)」と名付けられたディープマインドのプログラムは、言語モデルと、記号と論理ルールを使って推論する「記号推論」と呼ばれる種類のAIを組み合わせたものである。言語モデルは、パターン認識とプロセスの後続ステップ予測を得意とする。しかし、言語モデルの推論には数学問題の解決に必要な厳密性が欠けている。一方、記号推論は純粋に形式論理と厳格なルールに基づくため、言語モデルを合理的判断に導くことができる。

この2つのアプローチがそれぞれ創造的思考と論理的推論を担当し、難解な数学問題を解くために協働する。これは、人間が幾何学の問題に取り組む時のやり方によく似ている。つまり、既存の理解内容と探索的実験を組み合わせるのだ。

ディープマインドによると、高校数学のトップクラスの学生を対象とするコンテスト「国際数学オリンピック」と同じ難易度の幾何学問題30問をアルファジオメトリーに解かせるテストを実施したという。アルファジオメトリーは、制限時間内に25問を解いた。1978年に中国の数学者ウェン・ツン・ウーが開発した当時の最先端システムは、10問しか解けなかった。

「これは本当に素晴らしい成果です」と、ポン大学の数学教授であり、本研究には関与していないフロリス・ヴァン・ドールンは言う。「このような成果が出るのは、まだ何年も先だと思っていました」。

ディープマインドによると、同システムは、AIが論理的に推論して新たな数学知識を発見できることを実証するものだという。

グーグル・ディープマインドの科学者であり、同研究の著者の一人であるクオック・V・レは、「これはAIがいかに科学を発展させ、世界の仕組みを決定する根本的プロセスをより良く理解できるかを示す新たな一例です」と記者会見で述べた。

幾何学の問題が出されると、アルファジオメトリーはまず、論理的に駆動する記号推論を用いて証明を生成しようを試みる。記号推論だけでは証明が生成できない場合、言語モデルが新しい点や線を図に追加していく。こうすることで、記号推論で証明の検索を続行できる可能性が高まる。そして、検証可能な解が見つかるまで、言語モデルが役立つ要素を追加し、記号推論で新たな証明戦略をテストするというサイクルが繰り返される。

研究チームはアルファジオメトリーの言語モデルを訓練する際、既存の幾何学データ不足を補うために独自の訓練データを作成しなければならなかった。研究者は5億個近い幾何学図をランダムに作成し、これを記号推論のエンジンに与えた。記号推論エンジンは各図を分析し、特性に関するステートメントを生成。これらのステートメントが1億個の合成証明に構成され、言語モデルの訓練に使用された。

ルイビル大学のコンピューター科学工学の准教授であり、同研究には関与していないロマン・ヤンポルスキーによると、アルファジオメトリーの能力は「より洗練された、人間のような問題解決能力を持つ機械」に向けた大きな前進を示すものだという。

ヤンポルスキー准教授は電子メールで、「数学だけでなく、コンピュータービジョン、建築、さらには理論物理学など、幾何学問題の解決に依存する分野にまでその影響は及びます」と述べた。

ただし、改善の余地はある。アルファジオメトリーは「初歩的な」数学問題を解くことはできるが、大学で習うような高度かつ抽象的な問題を解くことはまだできない。

「AIがおそらく新しい数学的洞察を得ることにより、研究数学レベルの問題を解くことができれば、数学者は非常に興味を持つでしょう」と、ヴァン・ドールン教授は述べた。

ワンは、同様のアプローチをより広範な数学分野に応用していくことが目標だと言う。「幾何学の問題は、AIがあと一歩で深い推論ができることを示す一例にすぎません」。

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I’m an Editorial Fellow at MIT Technology Review, reporting on the intersection of climate, energy, and technology. I’m passionate about using data and graphics to tell compelling human stories. Previously, I produced broadcast and multimedia news at various media organizations in the United States and South Korea, covering topics ranging from immigration to music to public health.
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