ミツバチの本当の価値とは何だろうか? 渓流の価値とは? そして、マングローブの木の価値とは?
スタンフォード大学の「自然資本プロジェクト(Natural Capital Project)」の共同創設者であり、研究所長であるグレッチェン・デイリー教授は、そのような複雑な質問に答えることにこれまでのキャリアを捧げてきた。デイリー教授の研究チームは、新たな科学データと同プロジェクトが開発した革新的なオープンソース・ソフトウェアを使用して、政府、国際銀行、非政府組織(NGO)が自然の価値を定量化するだけでなく、自然の保全と生態系の回復によって得られる恩恵を判断できるよう支援している。
こうした生態学的懸念と経済的関心の融合は、一部の人にとっては珍しいもののように思えるかもしれない。しかしデイリー教授にとって、これらの融合は地球の生態系そのものと同じくらい自然なことだ。
デイリー教授は、1990年代にスタンフォード大学で生態学の博士課程を修了した。デイリー教授によれば、当時は経済危機と環境危機の両方に対する学際的なアプローチにとって革命的な時代だったという。スウェーデン王立科学アカデミーが主催したサミットをきっかけに、生態学者と経済学者が集まるようになり、経済政策と環境政策を発展させるための共同アプローチによる恩恵を検討し始めたのだ。
「人類の歴史の大部分において、私たちは自然が無限であるという前提で活動してきました」とデイリー教授は話す。「文明の崩壊の原因が、少なくとも部分的にはその地域の環境破壊によるものであることはわかっていました。しかし、それが地球規模で起こり得るとは誰も考えていなかったのです」。
地球規模の気候変動と、その無数の影響がすべてを変えてしまった。「気候変動の危機はすべての人に、経済システムが機能する前提を再考することを迫りました」とデイリー教授は言う。「さらに、数十年、さらには何世紀にもわたって蓄積されてきたさまざまな調査分野の脆弱性も明らかになったのです」。
1997年、デイリー教授は『生態系サービスという挑戦 -市場を使って自然を守る-(原題は『Nature’s Services: Societal Dependence on Natural Ecosystems』)』の編集に携わった。これはきれいな水、肥沃な土壌、種の生息地などの資源の価値を定量化を目指す分野である生態系サービスの概念を紹介した最初の本の1冊である。この本の出版をきっかけに、生態学と経済学の問題に関して、これまでにない学際的な連 …