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グーグルの失敗から10年、
AR新時代を牽引する
微細ピクセル技術の進化
Courtesy of Apple
ビジネス Insider Online限定
These minuscule pixels are poised to take augmented reality by storm

グーグルの失敗から10年、
AR新時代を牽引する
微細ピクセル技術の進化

拡張現実(AR)ヘッドセットとして鳴り物入りで登場したグーグル・グラスは、不発のまま10年後に販売終了した。だが、マイクロLEDやマイクロ有機LEDといった小さなピクセルが生む大きな変革は、今度こそARグラスの新時代を開くかもしれない。 by Matthew S. Smith2024.01.04

2013年4月に登場した「グーグル・グラス(Google Glass)」と呼ばれる拡張現実(AR)ヘッドセットのプロトタイプは、ヒット商品の要素を備えていた。スマホの最も重要な機能であるビデオの録画やナビゲーション、そして電子メールさえも、直感的かつハンズフリーでアクセスできることを約束していたのだ。タッチスクリーンやボタンなど忘れよう、コンピューティングの未来はあなたの顔の上にあるのだ、と。

だが、グーグル・グラスは大失敗だった。

コンセプトは美しかったが、装着が不便で、屋外では鮮明な画像を提供するのが難しかった。次いで、「グラスホール(glasshole、嫌な奴を意味するスラングであるassholeをもじっている)」と呼ばれる強い反発が起こった。ディスプレイが大きくて大勢の中でも容易に見分けられたため、装着者に対して少なくとも2件の暴行事件が起こった。

答えは明白だった。ハンズフリーのARは概念としては楽しいものだったが、巨大テック企業の影響に対する反発が高まる中で、装着者がサイバーパンク映画のエキストラのように見えるという汚名を消し去ることができなかった。

あれから10年以上経つ現在、グーグルが想定した未来、そしてそれ以上のものが現実になる寸前となっている。指先に載るほど小さな新しいディスプレイのいくつかは、マイクロLEDやマイクロ有機LED(OLED)を搭載しており、最も強烈なAR懐疑論さえ覆す可能性のあるヘッドセットを提供できるようになった。

サイバーパンク的な外観は変わらないかもしれないが、2024年にリリース予定のアップルの「ビジョンプロ(Vision Pro)」がこの変化を主導することになるだろう。スキーゴーグルを連想させる完全密閉型ヘッドセットは、同社が「空間コンピューティング」と呼ぶ、拡張現実(AR)と実質現実(VR)の混合を目的としている。

ビジョンプロは、製品の適用範囲を狭めることで、グーグルグラスが直面したいくつかの問題を回避する。アップルはヘッドセットがコンピューター、タブレット、テレビに代わる可能性があると期待しているが、それは自宅やオフィス内に限った話だ。

本当のイノベーションは内部にある。切手ほどの大きさしかないマイクロOLEDディスプレイのペアが、わずか3.3cm四方の画面に4K解像度を搭載している。各ディスプレイには、わずか6.3マイクロメートル(μm、1マイクロメートルは百万分の1メートル)間隔で配置された1100万を超える画素が含まれている。これは、ヒトの赤血球の直径よりも小さい。

目覚ましい進歩である。アップルのビジョンプロは、メタの「クエスト3( Quest 3)」や、HTCの「バイブXRエリート(Vive XR Elite)」のように、透過型混合現実として知られる技術を使用して、内部ディスプレイ上に外界を再現するためにカメラを利用している。しかし、こうした競合他社が使用している液晶ディスプレイは周囲の世界を忠実に再現する鮮明さが不足しているため、手書きのメモを見るといったシンプルなタスクであっても困難だ。

「全体として、アップルは素晴らしいものを実現したと思います」。ムーア・インサイツ&ストラテジー(Moor Insights & Strategy)の主任アナリストであるアンシェル・サグは言う。「このヘッドセットは、ARとVRの最大限の可能性を人々に本当に完全に理解してもらいたいと思う人間が作るヘッドセットです」。サグは、ビジョンプロのディスプレイの個々のピクセルは、「視力が2.0あるなど、非常に視力が高い人でないかぎり、ほとんどの人には見えないでしょう」と考えている。

ビジョンプロのピクセル密度の高いディスプレイは、ソニーセミコンダクタソリューションズグループによる数年にわたる研究の集大成であると広く信じられている。当初、同部門のマイクロOLEDへの挑戦は、「ソニーSLT-A77」のようなカメラのカラフルで高解像度の電子ビューファインダーに焦点を当てていた。また、同グループは2011年にソニーが発売した、映画館のような視聴体験をうたった「HMZ-T1パーソナル3Dビューワー」というヘッドマウントデバイスにもこれを搭載した。

HMZ-T1 ヘッドセットは3D映画で最高のパフォーマンスを発揮したが、3Dは流行のひとつにすぎなかった。しかしソニーはマイクロOLEDを諦めず、2018年にはピクセル間の距離を7.8μmから6.3μmに短縮した0.5インチのマイクロOLEDディスプレイを発表した。有機ELの発光層により近い位置にカラーフィルターを配置することを可能にしたブレークスルーによって実現したイノベーションであり、ピクセル間距離はビジョンプロに搭載されたより大型のディスプレイと同じである。この小ささのディスプレイでは、赤、青、緑のサブピクセルから放出される光のわずかな角度の変化でもカラー性能が損なわれる可能性がある。カラーフィルターを移動させることで各ピクセルの視野角が改善され、画質を犠牲にせずにより小さなディスプレイを実現できる。

マイクロOLEDは、有機フィルムで作製された発光ダイオードの従来の強みのいくつかを生かしている。各ピクセルが自己発光型であることは、それが「オフ」のとき輝度がゼロであることを意味する。ほとんどのヘッドセットの液晶ディスプレイ(LCD)はこれができず、その結果、暗いシーンのときでも霞んだグレーで光っている。そして、マイクロOLEDがオンのときは、本当にオンなのだ。ビジョンプロのディスプレイのピーク輝度は業界の輝度の指標であるニット(nit)を用いて、5000ニットとされている。これはメタの「クエスト2」のわずか100ニットと比較して50倍の改善である(メタはクエスト3の輝度を明らかにしていないが、おそらく同程度だろう)。

ビジョンプロの登場により、マイクロOLEDテクノロジーの普及が促進される可能性が高まっている。しかし、こうした強みの数 …

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