アジア最高層の建物であるだけでなく、中国の強力な経済力の象徴でもある上海タワーは、1フロアごとに1度ずつねじれて、最上階の121階までらせん状に伸びるファサードに外側全体を覆われている。ガラス製ファサードには2万1000枚以上のパネルが使われ、複雑にカーブした美しいデザインは、上海タワーの大きな特徴だ。またこのデザインは、タワーに吹き付ける風の影響を軽減することにも一役買っている。上海の高層建築にとっては重要な要素だ。
上海は中国の東海岸の長江デルタの低地にあり、風速30mを超える台風や強風の被害を受けやすい。中国気象局局長によると気候変動が災害増加に関連しているという。また、このところ増加している暴風などの気象災害を踏まえると、20億ドルの建築費をかけた上海タワーには気象災害を想定した設計がなされていると考えるのは当然だ。ところが驚いたことに、実際のところ、長期的な気候変動に適応するように建築物が設計されることははめったにない。
上海タワーを設計した建築会社ゲンスラーのベン・トラネル主幹によると、「建築物を設計する場合に考慮されるのは、現在のエネルギー消費量と過去のパターンです」という。「50年後のエネルギー消費量とそのパターンを予測し、それに合わせて設計することは極めて困難です。 …