2024年、選挙の誤情報と戦う準備を グーグル元CEOの提言
2024年は世界中で40以上の国政選挙が実施される。生成AIの登場やソーシャルメディアの変化によって、誤情報との戦いはより熾烈なものになっていくだろう。 by Tate Ryan-Mosley2023.12.21
この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。
2024年に何が起こるかを見据え始める時期に来ている。情報テクノロジーの情勢が常に進化する中、2024年は世界中で40以上の国政選挙が実施される予定だ。大変な年になるだろう。
最大の注目分野のひとつは、もちろん生成AI(ジェネレーティブAI)である。特に生成AIが、ソーシャルメディア、政治キャンペーン、選挙の誤情報をめぐる戦いをどのように変えるかが大きなトピックになることだろう。この新しいテクノロジーと大規模な選挙の合流は、モデレーション方法のシフト、法廷闘争、信頼と安全チームの削減、プラットフォームの再編など、ソーシャルメディア業界が大きな変化を経験している間にも起こっている。
これらすべては、控えめに言っても、誤情報との戦いの将来を不透明なものにする背景となるだろう。これはMITテクノロジーレビューが非常に真剣に考えているトピックであり、過去にも広範囲にわたって取り上げてきた。そして最近、グーグルの元CEO(最高経営責任者)であるエリック・シュミットがMITテクノロジーレビューに論評を寄稿し、「ソーシャルメディア・プラットフォームのパラダイム・シフト」と呼ぶものについて以下のように説明している。
フェイスブックなどの活動により、我々はソーシャルメディアのことを「絶え間ないコンテンツが流れ、摩擦のないフィードバックが得られる、一元化されたグローバルな『町の公共広場』」として理解してきた。しかし、X(旧ツイッター)における騒乱や、Z世代におけるフェイスブック・ユーザーの減少、そしてティックトック(TikTok)やディスコード(Discord)といったアプリの台頭は、ソーシャルメディアの未来が大きく変わる可能性を示している。プラットフォームは成長を追求するため、人々の関心を集めることを重視したアルゴリズムや推奨を促進するフィードを通じて感情を増幅し続けた。
しかし、それはユーザーから主体性を奪い(ユーザーは見るものをコントロールできないものだ)、代わりに憎しみや不和に満ちた会話、そして十代の若者の間に蔓延する精神衛生上の問題を残していく。AIがソーシャルメディアをはるかに有害なものにし始めている今、プラットフォームと規制当局はユーザーの信頼を取り戻し、民主主義を守るために迅速に行動する必要がある。
シュミットは、ソーシャルメディア企業がこの時代に対応するための6つのプランを提示している。シュミットの言及の中でうれしかったことのひとつは、本誌が以前何度か記事で取り上げたことのある、来歴情報の重要性である。洞察に満ちた有益な記事なので、ぜひ読んでいただきたい。
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テック政策関連の注目動向
- EUの「AI法(AI Act)」が大筋で合意され、AI規制の世界標準が設定されることになった。本誌のメリッサ・ヘイッキラ記者が、この点について知っておくべき5つのことを記事にしている。 ゴールラインを越えるのが非常に困難だった理由について詳しく知りたい場合は、私が執筆した記事を読んでほしい。
- チャットボット療法がどのように役立つかに関する「ヴォックス(Vox)」の記事は、非常に啓発的だと感じた。
- 「ヤフー(Yahoo)人権基金」に対する調査と、送金されるべきところにはほとんど資金が送られなかったと主張している現在進行中の訴訟は、テック企業が政治的圧力やメッセージにどのように対処するかについて、非常に興味深い疑問を引き起こしている。
テック政策関連の注目研究
非営利団体のAIフォレンジック(AI Forensics)とアルゴリズムウォッチ(AlgorithmWatch)が最近実施した調査によると、「マイクロソフト・コパイロット」に改名されたマイクロソフトのビング(Bing)AIチャットボットは、3分の1の確率で選挙情報を誤っていたことが分かった。ワシントンポストのウィル・オレマスは、この研究結果について「マイクロソフトや他の大手テック企業がインターネット検索を含む日常的な製品にチャットボットを統合しようと競争している中で、今日のAIチャットボットが将来の選挙に関する混乱や誤った情報を助長する可能性があるという懸念が強まった」としている。ニュースを生成AIに頼ってはいけないという教訓である。
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- テイト・ライアン・モズリー [Tate Ryan-Mosley]米国版 テック政策担当上級記者
- 新しいテクノロジーが政治機構、人権、世界の民主主義国家の健全性に与える影響について取材するほか、ポッドキャストやデータ・ジャーナリズムのプロジェクトにも多く参加している。記者になる以前は、MITテクノロジーレビューの研究員としてニュース・ルームで特別調査プロジェクトを担当した。 前職は大企業の新興技術戦略に関するコンサルタント。2012年には、ケロッグ国際問題研究所のフェローとして、紛争と戦後復興を専門に研究していた。