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Pokémon Go’s Breakout Success Has Implications for the Real World, Too

Pokémon GO大人気で
拡張現実に再注目

任天堂の新作『Pokémon GO』大ヒットで、拡張現実は実質現実より有望に見えてきた。 by Jamie Condliffe2016.07.12

任天堂が先週配信を始めた『Pokémon GO』は、拡張現実(Augumented Reality: AR)のスマートフォン用ゲームで、現実の世界に現れるバーチャル生物を捕まえて訓練し、交換できる。プレイヤーは近所を散策しながらバーチャル生物を探し、見つけたバーチャル生物にバーチャル・ボールを投げつけて捕獲する。

何かに似たゲームに思えるかもしれない。実はゲームの開発元のナイアンティックは、以前はグーグルの子会社で「イングレス」を開発したことで知られる。 「イングレス」では、プレイヤーは拡張現実世界で「エキゾチック物質」(XMと略されるゲーム内でのエネルギー源)を見つけるのが任務だ。ナイアンティックは グーグルがグループ企業を親会社のアルファベット参加に再編したとき、最初にスピンオフした。エキゾチック物質をポケモンと交換し、成功をつかんだのだ。

ゲームのコンセプトは単純だが、全米で『Pokémon GO』は 驚異的な大成功をおさめている。市場分析を専門にするシミラーウェブによると、7月6日の配信開始からわずか2日間で米国内の全アンドロイド機器の5.16%が『Pokémon GO』をインストールした。これがどれくらいの勢いかというと、米国で大人気の出会い系アプリ「Tinder」のインストール率よりも高いのだ。また、米国内のアクティブユーザーはツイッターに迫っている。米国では『Pokémon GO』に夢中になりすぎて妻の出産に集中できなかった男性もいる。

大成功により、すでに社会的影響も出始めた。9日、米国西部ワイオミング州に住むシェイラ・ウィギンスさんが近所の水源にポケモンを探しに出かけ、ポケモンの代わりに死体を見つけた。ミズーリ州オファロンでは、10代の若者が『Pokémon GO』を利用して武装強盗を実行した。ガーディアン紙によると、「ゲームの位置情報を使って、強盗団は犠牲者の場所を探り当て、引きこもり度の参考にしたのです」( ビル・ストリンガー巡査部長)。影響は、『Pokémon GO』のプレイヤー以外にも広がっている。たまたまゲーム内で関心が集まった地点にある住宅のそばを、多くの人がうろついているのだ。

もちろん『Pokémon GO』の成功にはいい面もある。ギズモードによれば、 ゲームを楽しんでいたら運動量が増えた、と愚痴をこぼす人がいたり、ゲームをきかっけに開発に取りかかり上空からドローンでポケモンを見つける人まで現れたのだ。株価が上昇した任天堂も満足だろう。たった2日間で市場価格が75億ドルも増加したのだ

経済的な大成功は、これから起きることの前兆かもしれない。世界中の企業やプレイヤーが実質現実(Virtual Reality: VR)の可能性にワクワクしているしているが、スタンフォード大学のそばでVR/AR、ゲーム事業のコンサルティングサービスを提供するデジ・キャピタルのアナリストは「実質現実はすぐに大成功し(中略)拡張現実はそれ以上に大成功するでしょう」と予測しているが「拡張現実の成功には時間がかかるかもしれません」と述べている。実質現実(Oculus、HTC、ソニーが参入している)はユーザーを別世界に移動させる没入型だが、拡張現実ではユーザーは現実世界にとどまる。そのため、拡張現実テクノロジーのユーザーは気分が悪くなりにくく、実質現実よりも応用範囲が広いのだ。

実用化の芽も出てきている。たとえばソファの販売店が、サイズ感や見栄えを拡張現実で自宅で体験できるようにし、購買を促すといった利用方法が考えられている。マイクロソフトのHololensやグーグルのTangoなど、プラットフォーム企業も実質現実より拡張現実に事業性を見いだしているようにも思える。

だが、拡張現実にはテクノロジー面の課題もある。実質現実は現実に近づけた画像を作り出せば済むが、拡張現実がユーザーの印象に残るシステムを構築するには、ユーザーに不自然を感じさせないよう、現実世界に虚像を重ね合わせなければならないからだ。Oculusはこうした課題を認識しており、昨年、まさにそのテクノロジーを専門にする英国企業サリアル・ビジョン(インペリアル・カレッジ・ロンドンのスピンアウト企業)を買収し、目標を達成しようとしている。

『Pokémon GO』は一時的ブームに過ぎないかもしれない。 しかし『Pokémon GO』の大成功は、拡張現実は、似たようなくくりで語られる実質現実より、単純に魅力があることの証かもしれない。

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ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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